私、永遠の後輩こと高葉井にも、去年から実は職場の後輩ができて、とうとう「先輩」になった。
アテビさんという人で、アーちゃんと呼んでる。
アーちゃんと私は都内の某私立図書館で、
寄贈本にラベルを貼ったり、
古くなった収蔵本と新しく入ってきた寄贈本のラベルを交換できないか確認したり、
パンパンになりかけてる収蔵庫の本を整頓して、新しい空きスペースを作ったり、
いろんなことをしてる。
ウチの私立図書館は、ちょっと特殊な図書館で、
たまにドチャクソに不思議な来館者がいる。
その日もその日だった。
児童向け閲覧室の受付窓口で仕事をしてたアーちゃんから、応援お願いしますの内線が飛んできて、
最初に私の先輩、藤森先輩がヘルプに入って、
数分後また児童向け閲覧室から内線。
『高葉井さん助けてください』
アーちゃんからの内線だった。
何があったんだろうって多古副館長と一緒に私も閲覧室に行ったら、
長い黒髪が怪しいっちゃ怪しい、
キレイっちゃキレイな、
つまり、要するに、怪しくて若い女の人が、
小さい子供たち10人くらいに
白く光り輝いてるワサビと黄色く光り輝いてるワサビを見せて何か演説してた。
ヘルプを出したアーちゃんは相変わらずの困惑。
副館長より先に閲覧室に来てた先輩は、怪しい女の人の隣でノビちゃってた。
漫画とかアニメとかだったら、多分ぐるぐる渦巻きの目か、虚ろ目かのどっちかだと思う。
「さあ、ワラベたち。邪魔者はワタクシの魔法で眠りについたぞよ。
ワラベたち、見るがよいぞ。これがワタクシのお気に入りのワサビ。金剛ワサビと銀剛ワサビじゃ」
なに「お気に入りのワサビ」って
(去年も来館して副館長に追い出された変人様)
「ちょっとアンタ!またウチの図書館で変なことして、良い加減にしないと出るとこ出るわよ!」
「おやおや多古副館長。おぬしもワタクシのお気に入り、金剛ワサビと銀剛ワサビの輝きを」
「見に来たワケないでしょ!この邪教徒、じゃないわ、邪教主!」
「何を言うか。ワタクシはこのワラベたちを、素晴らしいワサビ様の世界へ連れてゆくのじゃ。
不思議なワサビは偉大なワサビ。
ひとくちそれを食べれば、香りをかげば、
この世の苦悩も根塊も未練も、すべて、忘れ去ることが、できるのじゃ」
はいはい。子供たち。あとアーちゃん。
ここは良くないから一緒に避難しましょうね。
変な女の人の対応を多古副館長に任せてる間に、
私はアーちゃんと10人くらいの子供たちを、閲覧室から連れ出して、別の閲覧室にご案内。
女の人の隣でノビてた先輩は放っといた。
仕方無いっちゃ仕方無い。私ひとりじゃ、先輩を引きずっても担いでもいけない。
「これ。むすめ。ワラベたちを連れてゆくでない。
むすめ。むすめ。 これ。許さぬぞよ」
変な人は私に何か言ってたけど、気にしない。
最終的に変な人は、多古館長が図書館から放り出して、事件解決には20分くらいを要した。
お気に入りのナントカワサビとかいうのは没収されたらしいけど、
最終的にどう処分されたかは、分からなかった。
2/18/2026, 4:50:46 AM