ゆに

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『灯火を囲んで』

私たちの街には一年に一度灯火を囲って亡くなった自分の大切な人に想いを届けるという風習がある。
幼い頃は意味が分からず、ただただ火を眺めていた。
でも今年は違った。24歳、まだ若くして私は生涯添い遂げると決めた人を亡くした。
いまだに覚えてる。クラクションのうるさい、耳を刺す音。
目を瞑っていたら何もかもが終わっていた。
彼はもう避けられないとわかった瞬間から、私の頭も、体全体を抱きしめて、ああ。
もう、無理だ。
その時玄関のチャイムが鳴る。
「莉央さん。お迎えですよ。」
「…はい。」
お祭りの前には毎年ランダムで女性が選ばれてキツネのお面をつけてお迎えに来てくれる。そしたらお祭りに向かわないといけない。
1人、空が視界を覆いながら歩く。
「優くん、去年まで2人で歩いてたのに」
そう言いぼーっと歩く。
横を見ても彼はいない。
もう灯火はついていた。皆が手を繋いで囲っている。
私もご近所さんに誘われその輪に入る。でも隣に、隣にあの人がいないのが悔しくて、「気分が悪いです」と言って輪からすぐに抜けた。
たまたまあったベンチに座る。少し、目を瞑る。
「優くん、会いたいよ…」
そう言って頭を抱える。
「会えるよ」
「え?」
そう言って隣を見ると優くんがいた。
多分幻覚なんだろうけど、でも。
「優くん、なんで。もう。会いたかったの。なんで」
そう言って涙が溢れそうになる。
「あの灯火に、願ってくれたから。」
「あ。優くん。会いたかったの。ごめんなさい、あの時に、もっと早く気づけたら、庇えたらよかったのに…ごめんね」
「いや俺が勝手に庇ったし。それに好きな人には生きてて欲しかったから」
「私も優くんに…生きて欲しかったのに…」
周りの人がこっちを変な目で見てきたが、私のことをわかってる人は「かわいそうね」と呟く。
でも正直そんなのどうでもいい。
優くんと、ずっと会いたかった。
「優くん…私もう無理だよ…」
「そんなこと言わないでよ。そんな悲しい顔させたくて庇ったんじゃないのに…笑」
そう言われてそうだよねと思った。
「ごめん、わがまま聞いてほしい。」
「急だね笑できることなら」
「プロポーズしてほしいの、あの灯火の前で」
「…去年のこと思い出すね」
「うん笑再現してみて?」
「はいはい。行きますよ、莉亜。」
そう言われ灯火の前へ横並びで行く。
「莉亜、愛してる。結婚してくれ」
なんの前触れもなく彼が言う。
「喜んで、一生離さないでください笑」
周りの目が刺さる。
でもそんなの気にしない。今はこの幻覚でもなんでもいい。私の1番望んでいたものをただ、堪能するだけ。
また来年も会えるのかなと彼と笑いながら思う。
灯火を囲って、また彼と会えたら。そう願うのだった。

終わり

11/7/2025, 1:03:25 PM