きみは新聞配達の仕事をしていたね
またがる青緑の自転車がなめらかだった
毎朝4時にブロンドのくせ毛を撫でつけながら庭先に立つきみ
わたしは無理して早起きしていた
ごしごしとそばかすを擦って薄くしようとしていたきみに
そんなの意味ないと言ったけど気持ちが大事だときみは言った
きみのその完璧な横顔 彫刻みたいな体躯
サファイアの瞳には海が沈んでいた
わたしがするギリシャ神話の話を役に立たないと言う割に
「ハデスもかわいそうだな」なんて言っていたっけ
ある冬の朝 澄んだ青い空が肌を刺した
きみは時間になっても時間をすぎても日が暮れても来なかった
少しだけ日がすぎて
ある家の前にぐしゃぐしゃの自転車がおかれていた
その家は葬儀をしているらしく
チョコレート色のドアを大勢の人が行き来した
青緑の自転車は、ハンドルが醜く歪んでいた
目をそらして そして静かに通り過ぎた
アポロンは死んだのだ
空を見上げた
2/22/2026, 10:45:00 AM