"0からの"
脱却。
藁にもすがる思いでいた。
筆を握り、一目惚れした古典を一心不乱に臨書していた。
字が綺麗になりたい
最初はとても小さな願いだった。
左利きなこともあり、字を書くのは苦手意識があった
綺麗な字が書けたら心地良いだろうなと思って始めたのが、書道。
気付けば生活の一部となり、心から好きと言えるものの一つになっていた。
だから書の腕を鍛えられる整えられた環境をもぎ取り、敷かれた下敷きの上に座っている
平日は大体3時間。休日は6時間ほど、通しで書に向き合っていた。
専門の場所での学習は楽だとは思っていなかった。
けれど、家に帰ってそのまま眠りこけて夜中に目覚める
なんてことがしょっちゅうになるほどキツかった
そんなことちっぽけになるぐらい書道が好きだった
ある日、書き続ける書を決めることになり、いくつかの法帖を取り出して眺めていると好みドストライクの書に出会った。
線の強弱も違えば字それぞれの大きさもバラバラ、流れるような書風には奔放さが深く窺える。
なんといっても小気味の良い連綿線が私の好みでしかない!
絶対書いてて楽しい。極めたい、極めてみせたい!
その書と目が合って0.1秒でそう思った。一目惚れと言っても過言では無い。
もしその書が人だったら誘拐を目論むほどには惚れたと思う
早速書いて先生に見せてみれば「案外悪くない」と言われた
褒めることが滅多に無い先生なので、心の底から喜んだ。
けれどそのまま成長できるほど、書の道は甘くない。
すぐに行き詰まった。独特すぎる雰囲気や連綿線の再現は未熟な私にとって酷く難しい。
手本を注意深く眺めたり、先生からのアドバイスを事細かに書き留めた。
右上がりが特徴の書でもあったため裏返して吊るし、右上がりが甘い部分に印を付けたりなどしていた。
賞はいくつか貰ったが、満足いくものには到底なり得なかった。
少しでも、ほんの少しでも0で無くなっていれば嬉しく思う。未熟な私の唯一。
2/21/2026, 12:19:27 PM