初心者太郎

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—ノンフィクション—

もしあの子と付き合うことができたなら。
そんな妄想を心の中で描く。

「映画、面白かったね」彼女が笑みを浮かべる。
「うん、特に最後のどんでん返しがやばかったよね。余韻がまだ残ってる」

二人で映画を見終わった後、しばらくその話で語らい合いたい。

「口開けて、あーん」彼女がスプーンを口元に近づけてくる。
「おいしい!」

二人でご飯に行ったら、仲睦まじく、バカップルのような時間を過ごしたい。
バカップルを見るのは好きじゃないけれど、彼女となら、そんな時間を過ごしたい。

彼女を好きになってから、そんな妄想が心の中で繰り返される。
いろんなシチュエーションで何度も何度も。

心の中では自由だ。
でも、そんなの虚しいじゃないか。

「……伝えたいことがあるんだ」学校の屋上で彼女に言った。

今のままじゃダメだ、と俺は思う。
家で何回も練習した言葉を、今から彼女にぶつける。

「好きです!付き合ってください!」

頭を下げて、彼女の言葉を待った。

「ごめんなさい」

彼女は走り去った。
俺は頭を下げたまま、屋上で一人、涙を流した。

これでいい。
彼女がそう返事することは、分かっていたんだ。いつまでも希望があると思っている自分に、思い知らせてやったんだ。

俺は、心の旅路に終止符を打ってやった。
哀れな自分に、さようなら。

お題:心の旅路

12/29/2025, 2:45:38 AM