白井墓守

Open App

『今日にさよなら』

今日にさよなら、明日にこんにちは。
そして、お前とクロスカウンター。

○○○

男には、どうしても譲れないものがある。
——女だ。

クラスのマドンナ、リリちゃん。
『私、強い男が好きなの』

その一言で全ては始まった。
不良校と言われる、この高校で。誰が一番強い男かを決める決定戦が勃発。

最後に残ったのは、俺と親友の二人だった。

「やっぱ、おめぇが残ったかよ……」
「ああ、そうだ」
「へっ。オレっちは、負けるつもりはねぇぜ。恨むなよぉ~」
「それは俺の台詞だ」

親友はヘラヘラした顔をしているが、目だけが強く生命力の強い蛇のように光っていた。
肉体的には俺の方が上だ。だが、親友は蛇のようにトリッキーな動きをする。
細めの体格に油断した不良達が、次々と狩られて行ったのを知っており、俺の体に緊張が走る。

——勝負は一瞬だった。

どちらも動けぬ攻防。視線での読み合い。
……次で決めよう。
お互いにボロボロになりながら、目線だけで会話した。

そして決まったクロスカウンター。

ガンガンと鳴り響く頭痛に、鉄の味が広がる口内。熱された鉄板のように熱い身体に、倒れそうになるが気合で持ちこたえようとする。

絶対に勝つのだ、俺が。

そんなときだった。
またもや、クラスのマドンナであるリリちゃんが言った。

「でも、やっぱりぃ、リリはお金持ちが良いかなぁ」

ふつりと切れた精神の糸、薄れゆく視界に親友の呆けた顔が見える。お前もか、分かるぜ、その気持ち。親友。

クロスカウンター。
今日にさよなら、明日にこんにちは。

愚痴なんて男らしくないが、今だけは。
一言だけ言わせてくれ。

——そりゃ、無いぜ。リリちゃん。


おわり

2/18/2026, 9:01:38 PM