27(ツナ)

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祈りを捧げて

病気がちだった僕に母はよく言った。
「祈りを捧げなさい。祈りはいずれ届く。とにかく、毎日祈りを捧げるの。」
母を信じて僕は毎日毎日、祈りを捧げた。
「早く病気が治りますように。」

無慈悲にも僕の命は呆気なく終わった。
祈り?そんなもの無意味だった。
母を見ていると、性懲りもなく未だに祈りを捧げているようだった。
一体、誰に何を祈っているのか僕は母の近くに行き耳を澄ませた。
「……ありがとうございます。ありがとうございます。息子を消してくれて。ありがとうございます。」
そうか母は、祈りを捧げてなんかいなかった。
僕の死を願っていたんだ。

12/25/2025, 11:53:23 AM