『月が綺麗じゃ足りない』
ゲホゲホと大きく咳が出る。口を覆った手を見ると、ベッタリと赤い血が着いていた。
風が吹き、煙が流れる。煙の中から出てきた先生は酷い怪我を負っていた。近寄ってみるも、先生はもうか細く息をしているだけだった。
「先生…」
地面に横たわっている先生を抱える。先生の虚ろな目がこちらを見た。先生の指が俺の服を掴む。
「あれを…使うのは、もう、辞めろ……。お前が……壊れて、しまう……」
先生は途切れ途切れになりながらもそう言った。だが、それが最後の力だったのだろう。先生の目は閉じられ、俺の服を掴んでいた指も地面に落ちてしまった。
「先生…」
目から涙が溢れる。先生の名を呼んでももう見てくれることはないし、答えてもくれない。その事実が俺にとても重くのしかかる。
先生の頬を撫でる。今までずっと触れたくて触れたくてしょうがなかった。
「ようやく、貴方に触れることが出来た…」
昔、"I love you"を遠回しな言葉で表現した人がいるらしい。だが、俺はそんな遠回しな言葉より直接的な言葉で伝えたい。俺の、気持ちを。
「I love you…
貴方のことを愛しています。ずっと、ずっと」
2人の影が重なるのを見る者は誰もいなかった。
【Love you】
2/23/2026, 5:19:34 PM