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枯葉(オリジナル)(異世界ファンタジー)

時空の狭間に飛ばされていたバベルの塔ごと元の場所に戻って来たら、1000年以上が経過していた。
外界から視認できないよう塔ごと大きな結界を施し、リンク達は恐る恐る外に出た。
最初に感じたのは精霊濃度の違いだった。塔内と違って外界はかなり薄く、魔法の威力は大きく減退した。
捜索範囲を広げていくと、やがて、様々な動植物と遭遇した。塔の崩壊とともに世界に散ったキメラや研究生物などが、少しの進化を遂げ、今を生きていた。

より遠くまで探索に赴けたのはレッジだった。
音速で駆けることができる彼はひとり、様々な土地まで足を伸ばした。
ライも一緒に行きたがったが、塔から離れるほど精霊の加護が薄くなり、呪われた古傷が表出して具合を悪くするので、無理は禁物であった。

ある時、レッジが皆を外に連れ出した。
結界の外、少し行くと自然豊かな森がある。
木がまばらな少し開けた広場に、皆が輪になって座れそうな切り株があった。
レッジは背負っていた盲目のヨウを下ろし、切り株に座らせると、ついてきたリンクとライにも座るよう促した。
「何?どうしたの?」
「楽しいことを教わってきたからさ。皆でやりたくて」
レッジは、にんまりと笑った。
そして、風魔法を繰り出す。
小さな竜巻状の風が、周囲から枯葉や枝を吸い上げて戻ってきて、目の前にこんもりと積み上がった。
「リンク、火つけて。すげぇ弱火でな。……消し炭にするなよ」
「難しいこと言うな」
リンクは慎重に火をつけた。
修行の成果で繊細な炎が出て、うまく火がついた。
ライがパチパチと拍手する。
つられてヨウも拍手した。
「そんで、これ」
レッジが銀色の物体を取り出して、皆に配った。
「何これ」
「芋」
「芋?」
「この状態で焚き火でじっくり焼くと、美味しい焼き芋になるんだよ」
「へぇ」
ライの目が好奇心でキラリと光った。

焚き火を囲って、各自自分の芋を世話しながら、のんびりと話をした。
レッジの見てきた村のこと、ライとヨウの研究のこと、リンクの修行の成果のこと。
「そろそろ良いかな」
芋の柔らかさを確かめて、レッジは皆に声をかけた。
外を覆っていたシートを剥がすと、中から赤紫の芋が出てきた。
二つに割ると、黄金色の断面が現れる。
ホクホクと湯気をたてていた。
リンクは竜とのキメラで熱いのが平気なので、冷ますことなくそのままかぶりついた。
思わず目が丸くなる。
「甘い!何これ!美味しい!」
「だろ?」
レッジは嬉しそうに笑った。
ライとヨウは芋に息を吹きかけて冷まし、歯だけで端の方に齧り付いた。
「わ!レッジ!これ美味しい!」
ヨウが感嘆の声をあげて、レッジに微笑みかけた。
ライも嬉しげに目を細めて言う。
「世の中には、まだまだ我々の知らない美味しいものがあるんですね…いや、これこそ1000年の進化の結果かもしれません。レッジ、これからも美味しいものがあったら是非持って帰って来てください」
「了解」
三人三様のらしい反応にレッジは笑って、敬礼で答えたのだった。

レッジは楽しいことが大好きだった。
大事な仲間達と、楽しい時間と記憶を共有すること。
レッジにとっては今も昔も、それが一番の望みであった。
それが叶う今が幸せだった。
こんな日々が、いつまでも続きますように。

2/19/2026, 1:19:18 PM