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 〈同情〉

 ぬるい瞳。下がるまなじり。
 閉じきった部屋で、俯くあなたの背を撫でる。

 同病相憐れむ、なんて、とんでもない。
 ただ、これは同情だ。傷を知るあなたに、この身が
 手渡すことのできる、唯一のシグナル。

 けれど、輪郭のない病を温めているからこそ分かる、
 隔絶もある。
 あなたはわたしと、同じ病ではない。
 もっと高尚で、純然たる、うつくしい悩みだ。
 その玻璃を、にごり淀んだ唇で、穢すことなどゆる
 されない。

 だからこそ、たったひとつの同じもの。
 揃いの、三十六度の体温のみで、あなたを慰める。
 どうか、こんなぬるさでは、孵らないで。
 あなたのたっとい胚を眠らす、三十五度の祈り。

2/20/2026, 4:24:12 PM