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2/20/2026, 4:24:12 PM






 〈同情〉

 ぬるい瞳。下がるまなじり。
 閉じきった部屋で、俯くあなたの背を撫でる。

 同病相憐れむ、なんて、とんでもない。
 ただ、これは同情だ。傷を知るあなたに、この身が
 手渡すことのできる、唯一のシグナル。

 けれど、輪郭のない病を温めているからこそ分かる、
 隔絶もある。
 あなたはわたしと、同じ病ではない。
 もっと高尚で、純然たる、うつくしい悩みだ。
 その玻璃を、にごり淀んだ唇で、穢すことなどゆる
 されない。

 だからこそ、たったひとつの同じもの。
 揃いの、三十六度の体温のみで、あなたを慰める。
 どうか、こんなぬるさでは、孵らないで。
 あなたのたっとい胚を眠らす、三十五度の祈り。

2/20/2026, 2:05:46 AM



〈枯葉〉


普段なら、目にも留めない。
今まで何枚踏んだか、それすらも覚えていない。

とある、雨の日。
屋根の付いたベンチに掛ける。靴底からやけに水の跳ねた音がしたので、靴をこちらに向けると、葉が何枚か付いていた。
べったりと、踏まれて離れないであろう、枯葉。
少し、不快になった。
いつの間に、自分はこんなものを踏んだのか。あるいは今まで、何枚踏んできたのだろうか。ほんの小さな、浅薄さ。虫食いの跡に似て、心にも穴が空く。

そういえば、あの人とも、何日会えていないだろう。
歩くたび、靴底の形に歪められたのであろう、そのひしゃげた枯葉と見つめ合う。
あなたもわたしを、恨んでいるのかもしれない。

冬もそう遠くない、肌を包む空気の冷たさに、より色付いた孤独を突きつけられる。雨のとばりは、人と人との隔たりを、大きくさせる。
通りすがった誰かが、何の気なしに、枯葉を踏み付けていった。また、傷付く。跳ねる水の音すら、今は、遠くのだれかの叫びみたい。
気が付けば、無意識に葉を取ろうと、靴を地面に擦り付けていた。靴の底では、ちぎれた枯葉がわらっていた。

2/19/2026, 7:40:40 AM





〈今日にさよなら〉


夜半。曇って淀んだ、真っ黒な空。
星が好きだ。かの命を燃やした足跡が、ただの光となってこちらに届く。けれど、今日は曇天。星のひとつも見えない空模様に、恋はできない。
煌めきのない天と、晴れない胸懐が交わって、部屋の明かりを落とした。じわりと、静かに失せていく天井の星を仰いで、瞼を閉ざす。
明日は、あの一等星に、恋ができますように。