太陽のような
「……っ!」
目を開けると、ぐわりと世界が近づいてここが布団の上だと気づいた。直前の浮遊感がまだ抜けず、心臓がうるさい音を立てている。ひとつ、ふたつと意識的な呼吸を繰り返し、それからやっと手を動かした。胸元にかかった厚めの布団は、確か昨日寒いからとひっぱりだした冬物だ。重かったかな、とぼんやり考えながら枕元の携帯を引き寄せる。7時半。街が忙しなく目覚め出す時刻だ。溜息をつきつつ、見るともなしにSNSを開いた。電車が遅延してるだとか、あと2日頑張れば3連休だとか、日々を正しく生きる人達の呟きをスワイプして消費していく。眠りに落ちたのは今朝方5時。起きられるはずもない。
ありきたりな朝の風景と人々の呟きに飽きて携帯を投げ出そうとした時、ぽん、と軽い音が着信を告げた。
『おはよ!起きてる?』
いつも通りの言葉にふ、と気が緩む。
『今起きたとこ』
寝転がったままたぷたぷと返事を打てば、いつも通りの朝を送る相手がまたメッセージを返してくる。
『今日いい天気だよ!』
『そうなんだ』
『そう。公園に行きたいくらい!』
『いいね』
単調な返事にも飽きず、細切れに言葉が交わされる。しばらく他愛のない会話をしたのち、この時間を終わらせる言葉が飛んできた。
『いってきます〜!』
いってらっしゃい、という言葉に既読はつかなかった。きっと本当に直前に送ってくれたのだろう。しばらく画面を見て、それからゆっくりと起き上がった。公園に行きたいくらいいい天気だと言われたことを思い出して、カーテンを開ける。階下に広がる街は忙しなく朝を作り上げていて、否応なく1日の始まりを自覚する。
──いってらっしゃい。
柔らかな日差しに目を細めながら、どこかで頑張る小さな太陽に向けて呟いた。太陽が登りきるまであと少し、忙しない朝が広がっていく。
2/22/2026, 4:14:30 PM