『バレンタイン』
今年もバレンタインがやってきた。
さあ、憎いアイツにチョコを投げてブッ殺そう!!
○○○
昔、バレンタインとは恋する乙女が、愛した男にチョコを渡す日だったらしい。
今、バレンタインとは恋する乙女が、振られた相手に怨嗟を込めてチョコをぶん投げる日となっている。
「なぁ、今年のバレンタインどうする? お前、死ぬの??」
「や、やめてよ……まったく、縁起でもない」
苦々しい顔もイケメン。
顔面格差とは、これ如何に。
朝の通学路。
バレンタインの日に俺は、イケメンの幼馴染と歩いている。
隣には俺と違って顔面が輝かしいイケメンの幼馴染。さぞや告白されて相手を振ってきたことだろう。
つまり、今日はめちゃくちゃチョコをぶん投げられるという事だ。可哀相。
イケメン無罪なんて言葉が流行ったのは昔。
今は、イケメン有罪なんて言葉が流行っている。
「……そういう君は、心配しなくていいの?」
「はぁ? だぁれが俺みたいな平凡男にチョコぶん投げるってぇ? 未だに告白一つされたこたぁございやせんが??」
茶化してケラケラ笑っていると、アイツは真剣そうな顔で俺に向かってこう言った。
「——俺と付き合ってください」
「…………は?」
ポカンとした顔でアイツを眺める。
アイツはしたり顔で俺に笑って「これで振られたら君もチョコぶん投げられる覚悟しといてね」なんて言って足早に先に行ってしまう。
冗談だろ? そう笑い飛ばすにしては、アイツの耳が赤かったのに気づいてしまって、何も言えずに立ち止まってしまう。
……通行人の、何だコイツの目が痛い。
俺はカバンからチョコを一つ取り出した。
「今年、アイツにチョコをぶん投げるつもりだったんだけどなぁ……」
俺は真っ赤な顔でアイツを追いかけるために走り出した。
——この世のバレンタインに幸あれ!!!
おわり
2/14/2026, 5:58:01 PM