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降り積もる想い 2025.12.21

嬉しいこと、哀しいこと、楽しかったこと、時には怒ったこと。
それらは全て、たくさんの想いが降るように積もっていく。
生まれた頃は私のモノクロからセピア色の写真。その数年後には、たくさんのきょうだいと遠足の時に写った、少し色褪せたカラーの写真。みんな半ズボンに半袖シャツといった格好で、ニカッとした笑顔がまぶしい。

20代には妻と共に取った2L版の写真。緊張と期待で表情が硬い。新婚旅行先で、ラベンダー畑で撮ったときの妻のはにかむ笑顔が、今でも私の胸に残っている。

30代になると子供の写真が増えていく。産湯に浸かった頃の写真。はいはいが出来、立ち上がることが出来たときの写真。小学校に入ったときの、校門の前で桜吹雪と共に立つ、妻と息子の笑顔。

40代になるとビデオテープで運動会を録り、それがいつしかデジカメの画像になった。その頃の息子は荒れていたが、カメラを向けると、『しょーがねぇな』と顔を向けてしっかり画面に入ってくれた。
息子の進路を心配したものの、大学に入り、入社したその日に撮った写真はケータイの写メになって、家族に送られていった。

50代。息子は結婚したい人を連れてきた。初対面の時には緊張してガチガチになっていた。その後、食事会を行い、ウェイターさんに頼んで何枚かスマホで写真を撮ってもらう。
コンビニプリントした写真を配ったら、四人とも顔がひきつっているのを見て、私たちは思わず笑ってしまった。
今はすっかり相手は私たち家族に馴染んでいった。私たちも、相手の家族と馴染めただろうと、そう思っている。

60代を過ぎてからはスマホの動画がメッセージアプリの中に増えていく。孫の6ヶ月の写真。3歳の写真。お嫁さんの実家で預かっていることもあるようで、あまり顔が見れず、少し寂しい。
動画だけではなく、小学校に入ってから夏の休みには直を顔を見ることも増える。
年々成長していく孫の動画。そして、実際に会う度に背が伸び、大人らしくなっていく孫。スマホの中は孫の写真と動画がいっぱいになり、SD カード対応のスマホに換えるようになった。
そのカードも何枚もたまっていく。

70代。孫が息子のところに顔を出したらしい。結婚をしたい人を連れてきたのだとか。時の早さを肌で感じながら、私は昔より細くなった手で、そのときの写真を眺めた。やはり、昔のように顔がこわばって撮れているその写真を見て、自分もそうだったと思い、笑ってしまった。

80代。私は暖かいこたつのなかで足を温め、金の刺繍のはいったはんてんを着て、温もっている。古いアルバムから順番にめくって、懐かしい記憶をたどっていた。
アルバムの1ページ1ページ、ケータイやスマホに入っている写真に動画。降り積もっていく想いが重なって、思わず涙が出た。
隣に座っている妻が、そっと私の手を握る。
「これからも写真も動画も取りましょう。まだまだ子供も孫も成長するのですから」
「そうだな。これからも取らなきゃな」
私は手元に合った一眼レフのデジカメを眺めながら、にっこりと笑った。

12/21/2025, 6:39:01 PM