『揺れるキャンドル』
キィキィ……音を立てて揺れている。
――キャンドルが、揺れている。
楽しい、楽しい旅行の……筈だった。
学生最後の冬休みだからって、みんなではしゃごうって。
それが、こんなことになるなんて。
トムは毒殺だった。
――紅茶好きなトムは、愛読書のエチカを片手に泡を吹いて死んだ。
その恋人のアメリアは溺死だった。
――お風呂好きなアメリアは、こんなときだから気分転換しなきゃ!と空元気で笑ってて……そのあと、もこもこの泡に覆われて死んでいた。
バロックは銃殺だった。
――俺は何も信じない、そう言って愛用のマスケット銃を大事に抱え込んだバロックは、マスケット銃を抱き締めながらも、窓から狙撃されて眉間に風穴を開けて死んでしまった。
キャンドルは絞殺だった。自殺とも言える。
――死にたくない!私は何も悪くない!!と半狂乱で取り乱していたキャンドルは……今、目の前で、アイツに殺されるぐらいなら、と。遺書を書いて首を吊っている。
……残るは、わたしとあなた、一人だけ。
「ねぇ、あなたがみんなを殺したの?」
「うん、そうだね」
「わたしのことは、殺さないの?」
「うん、そうだよ」
「なんで?」
「だって君は関係ないじゃないか……妹のイジメに」
キャンドルが揺れている。
それを不気味に笑いながら、パトリックは泊まっていたペンションを出て崖まで歩いて行って『セシリア、愛してるよ』そう呟いて、身を投げていった。
……また、わたしだけ、生き残ってしまった。
おわり
12/23/2025, 4:35:41 PM