海月 時

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「私は、間違っていたのでしょうか?」
誰か教えて。彼への愛は罪だったのですか?

「何故、殺人なんて馬鹿な真似をしたんだ?」
警察署の取調室で、若い男の警官が私に問いた。その瞳があまりにも真っ直ぐで、嘘をつく気が起きない。
「愛していたからです。」
警官の顔が白くなる。それでも、私は続けた。

私が愛した彼は、神様でした。光は彼を照らすためだけに存在しているのだと知りました。でも、彼は変わってしまった。落ちぶれて、闇こそが彼の生きる世界になったのです。それが私には耐えられなかった。 
「だから、殺したのです。」

沈黙の取調室。暫くして先に声を出したのは私だった。
「私は、間違っていたのでしょうか?私の愛は罪なのでしょうか?」
警官は少し考えた素振りをして、ゆっくりと口を開いた。
「アンタは何も間違っていない。光を守る為に自ら闇となったアンタを、俺は尊敬するよ。」
警官は酷く真っ直ぐな瞳で、私を見つめた。そして、言葉を続けた。
「光っていうのは、曲がりやすいんだよ。でも確実に、誰かのもとには届く。どんなに消えそうでも、道が曲がっていても、光は光のままなんだ。だから、アンタの愛した男は、今でも光のままだ。」
涙が止まらなかった。顔を上に向けても、涙は溢れ続ける。あぁ、彼も光の住人だ。

警官が言った言葉を振り返り、やはり私のした事は間違いだと思った。光が消えたと思い込み、何も許せなかった自分を恨む。だが、願い事が出来た。あの警官がいつまでも光の回廊を歩める様にと、星に願った。

12/22/2025, 3:34:02 PM