富豪が村に来て言った。
「一週間後、この村で誰よりも個性的な人間に大金を与える」
翌日から村は騒がしくなった。
全身を華やかに彩る者。
話の語尾にビブラートを奏でる者。
綿をまとい羊として生きる者。
家の屋根を取っ払い外壁に糞尿を塗りたくる者。
村はものの数日で見たことのないものだらけになった。
審査の日、村の広場は極彩色と騒音で埋め尽くされた。
中心に佇む富豪はその一人一人を目でなぞっては首を捻り続け、
やがて、広場の外に立つ一人の男に気づいた。
富豪は、逆立ちで童謡を熱唱する桃色のピエロ女を手で押し退け、男に近づいた。
「なぜ参加しない」
男は答えた。
「個性がないので」
富豪は笑い、男に大金を渡した。
誰もが個性を競う中で、
唯一、個性を持たなかった男だった。
2/17/2026, 6:46:24 AM