これは、とある少年の話である。
まだ駆け出しの僕は、右も左もわからず、がむしゃらに生きていた。
その頃は、目の前のことをこなすので精一杯で、今みたいに先のことなんて考える余裕はなかった。
来る日も来る日も努力を重ねていた。
ストレスのせいか、食べ物が喉を通らず、戻してしまうこともあったのを覚えている。
そこまでして目指したいものがあった――と言えばそうなのだが、今思えば、あの頃の僕は自分自身の姿がまったく見えていなかった。
まるで色のない真っ白な雪原に、ひとり野放しにされたみたいだった。
歩いても歩いても景色は変わらない。
後ろを振り返れば、かろうじて足跡だけが残っている。
しかしその足跡を消し去るように、上から静かに雪が降り積もる。
積み重ねてきたはずの軌跡は、すぐに消えていきそうだった。
それでも僕は、前に進むしかなかった。
いつかこの努力が報われると信じて。
受験生だった頃の気持ちを思い出しながら書いてみました。
報われるかどうかなんてわからない。
それが「努力」なんだと思います。
でも、その努力はきっとどこかで自分を支えてくれる。
そんな気がしています。
もし歩きづらくなったら、一度だけ立ち止まって、
「自分はどこへ向かっていたんだっけ。」とそっと考えてみるのもいいのかもしれません。
それだけで、また少し前を向ける気がします。
「雪原の先へ」
12/8/2025, 4:02:40 PM