前回投稿分からの続き物。
その日も平和な世界線管理局です。
東京は2月14日、バレンタインデー当日。
斜陽の管理局の屋上に、鼻血の跡を残しつつ両鼻にティッシュを詰めた成人男性が、
すなわち法務部のビジネスネーム・カモが、
丁寧に作られた四つ葉クローバーのチョコを掲げ、
しみじみ、ノスタルジーしておりました。
「なんだそれは」
屋上にタバコを吸いに来たのが、ルリビタキ。
「チョコ?」
カモは何も答えません。
ただ沈みゆく陽光に、チョコを掲げています。
チョコはシンプルながらも丁寧にトッピングが為されて、なにより字が書かれておりました。
『カモさん いつもありがとう
これからもよろしくね ドワーフホト』
カモは、何も言いません。
ただただバレンタインデー当日に貰ったチョコを、
日頃の大きな感謝を伝えるために作られた丁寧な丁寧な気持ちの結晶を、
食うに食えず、飾っておきたくても食品なので、
ただただ、涙と鼻血のにじむ黄昏感情の視線で、
いつまでも、見つめておったのでした。
…––カモは元々、管理局を敵視している別組織、「世界多様性機構」の構成員で、
当時のビジネスネームを「ネギ」といいました。
多様性機構の活動の邪魔をする管理局に忍び込んで、破壊工作なり、妨害工作なりをするのが、昔々のカモネギのお仕事。
機構時代、すなわちそれは去年の7月26日頃、
つまりスワイプも面倒なほど昔々の過去投稿分で、
管理局と交戦して、酷いケガを負って、
作戦継続も撤退もできないでいたところ、
当時のカモネギの敵であるハズの、ドワーフホトのお嬢さんが、カモネギをかくまって傷を治し、
真実の慈愛で、優しくしてくれたのでした。
『ホトさん、俺は、いや、わたしは……
機構から、今日を限りに、足を洗う!!』
かくして機構の構成員「ネギ」は、管理局にこっそり就職して、ビジネスネームの「カモ」をゲット。
自分を助けてくれた収蔵部収蔵課の管理局員・ドワーフホトに恩を返すべく、
ドワーフホトが買い物に行けば荷物持ち、
ドワーフホトが危険世界に行けばボディーガード、
彼女が望めばカーモーイーツにカーモタクシー、
すなわちカモ騎士、カモ執事として、
自身のハイスペック能力を、捧げたのでした……
が、
ドワーフホトのお嬢さんには既に心の大親友、
経理部に勤めるスフィンクスという、敬意や推しの念では到底踏み込めない、崩せない魂の友が、
既に、おりまして。
ドワーフホトに恩を返しつつも、
自分は、カモは、どれだけ誠意を尽くしたって、ドワーフホトのイチバンにはなれない。
どれだけ自身の能力を捧げたって、ドワーフホと、なによりスフィンクスの、隣にも1歩後ろにも、
十数歩後ろにすら、立つことができない。
どれだけ尽くしても、
自分はホト様から見えていないに違いない。
それでも良い。
それでもホト様の、「あの日」の恩に報いたい。
苦悩と報恩と黄昏を感じながら、しかしカモの命の恩人が時折見せてくれる笑顔だけが、
カモをカモたらしめ、カモに幸福を授けました––
––で、
そんなこんなでカモネギが、ドワーフホトに恩を返し続けてだいたい8ヶ月。
2月14日のバレンタイン。
ドワーフホトのお嬢さんが管理局で開催した、カカオスペシャルパーティーの終盤でした。
カモは、ドワーフホトのお嬢さんから、義理でも本命でもなく、感謝の結晶としてのチョコを、
手渡しで、貰ったのでした。
「カーモさん、カ〜モさん」
ぴょこぴょこ、ぴょこぴょこ。
イタズラな明るい笑顔をして、ドワーフホトのお嬢さん、カモの前に来たのでした。
「カモさんに、あたしからの日頃の感謝〜」
ドワーフホトに急かされて、彼女から貰った箱を、震える手で頑張って開けますと、
カモの目に飛び込んできたのは、それはそれは丁寧に、それはそれはよく時間をかけて、
間違いなく「自分(カモ)」のためだけに作られた、一点もののチョコレートでした。
『カモさん いつもありがとう』
カモの恩返しは、ドワーフホトから間違いなく、
ちゃんと、見えておったのでした。
「ありがたく、頂戴します」
それが、カーモーイーツでカーモタクシー、カモ執事なカモの今年のバレンタインでした。
結果としてカモはその日、感謝カンゲキ雨あられ。
斜陽の管理局の屋上で、鼻血の跡を残しつつ両鼻にティッシュを詰めて、
丁寧に作られた四つ葉クローバーのチョコを掲げ、
しみじみ、ノスタルジーしておったとさ。
2/15/2026, 3:00:04 AM