『今日にさよなら』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
〈今日にさよなら〉
「すみません、遅れました。」
待ちに待った君は、走ってきたのか少し息が乱れていて、俺を待たせたことに謝った。
実際の時間にしたら、なんてことない間だったと思う。しかし、なんとも途方もなく感じた。
自分からやっとので送ったメール。呼び出した場所で壁掛け時計を睨み付けてから俯いて、手を握ったり開いたり。そして、開かないドアを上目遣いでチラと見る。何度繰り返したか。
「や、ごめん。忙しかった?」
「少し片付けに手間取りました。…何かありました?」
早く来いと念じていたくせに、いざ目の前にするとどうすればよいか分からなくなって、とりあえず“いつもどおり”を目指したつもりだったのに違っていたようだ。ちょっと焦る。焦ると同時に、自分を理解してくれているようにも感じて嬉しい。
「あのさ、」
自分でも驚くくらい、緊張して掠れた声が出た。
「すき、なんだけど、」
あれ、俺っていつもどうやって声出してたっけ。喉が、きゅう、と締め付けられて、うまく声がでなくて、
俺の記憶は一日しか保たない。
それを知ってからは、毎日がさよならの連続だ。
一日の始まりに、メモ書きを見てはその事実を知り、一日をなんとも言えない、悲しいような、重苦しいような、時間を共にする人がいない孤独感のような。そんな気持ちのまま過ごす。
そうして最後には「今日にさよなら」をするのだ。
ところが、その日は違った。
心が弾んだ。
葉の色が鮮やかな緑で、ああ、緑といっても一枚いちまい、色の種類は違うのだろうなぁ、とそんなことを考えた。
心が弾んだ。
口にする水が妙に甘く、これは硬水か軟水か、どこの水で、どんな他との違いがあるのだろうか、やたらとそんなことに関心が湧いた。
踊るように階段を駆け上る。重力なんてあってないようなものだった。弾む、弾む。
いわゆるこれが、恋というやつだと知った。
俺の記憶は一日しか保たない。
だったら、こういうことじゃないか。
俺の恋焦がれるあの人に、俺は毎日新鮮に、また恋ができる。
想いを告げる必要なんかない。恋とは、なんと素晴らしいものだろう。
明日が楽しみだ。ああ、待ち遠しい。
朝起きたらまた新しい恋が始まる。
メモ書きに写真を丁寧に挟み込み、布団にダイブする。
こんな気持ちで眠るのは初めてだった。
それじゃあ。「今日にさよなら」。
気になっていたあの人を食事に誘いました。彼は私が予約したその店の料理をとても喜んでくれました。美味しかったからまたここに来たいな、と言ったので、じゃあ是非また、と私は返事をしようとしました。でも次の彼の言葉を聞いて、そんな返事はできませんでした。
「うちの妻と娘にも食べさせてあげたいな」
視界が一気に暗くなってゆくのを感じました。私は彼のことがずっと好きだったけど、彼のことを少しも知らなかった。家族がいたなんて。そんな事実をこんなところで知って酷いめまいを覚えました。
その後はどうやって帰ったのかもよく覚えていませんが、気がついたら自宅の最寄り駅でした。コンビニに寄って、ありったけのアルコールを買い込みました。バイトの大学生が少し引いていました。帰り道、コンビニ袋をぶら下げながら歩いていると踵に痛みを感じました。慣れない7センチヒールを履いたせいですっかり靴擦れをしていました。
今日は、これまでの人生の中で5本指に入るくらい嫌な1日だった。失恋をしたせいで半ば自暴自棄になっていました。早く忘れるために、いっぱいお酒を飲んで熱いシャワーを浴びて寝たい。残り2時間あまりで今日が終わる。今日なんかもう要らない。明日が早く来ればいい。そう思えば思うほど、今日が何という日なのかを思い知らされるのです。
スマホを取り出しフォルダを開きました。2004年の今日、私は当時の恋人を亡くしました。あれから10年経って、ようやく新たな恋に踏み出せると思ったのに。ちょっと良いかなと思った人はまさかの既婚者で、もう私に恋愛は向いてないのかなと思ってしまいました。あの人の命日は決まって嫌な思い出ばかり起こる。今日が人生の中で5本指に入るほど嫌だったと言ったけど、残りの4本いずれも何年か前の今日の出来事でした。1番は、言わずもがなあの人を亡くしたことです。本気で愛していました。私達、結婚するんだと思っていました。なのに貴方は逝ってしまった。突然死だったから悲しみに浸る暇もなかった。あの日から、私の中で何かがおかしくなった気がします。毎年この時期は何をやってもうまくいかない。もしかして貴方が空の上から操作しているのでしょうか。俺のことを忘れるなよ、とでも言いたいのでしょうか。
アパートにつき、ビールたちを冷蔵庫にしまってからリビング脇の小さな棚に飾られている写真を眺めました。私と貴方が肩を組んで幸せそうに笑っている写真。できることならあの頃に戻りたい。願っても叶わない思いを抱えながら、私は今日にさよならするのです。でも、貴方との思い出とはまだ暫くはさよならできそうにない。
昨日の君にありがとう
今日の僕にさようなら
明日の私にこんにちは
今日にさよなら、と言ってもただ「別れた」というだけの気分にならないのはなぜだろうか。
それどころか、「今日にさよなら」と言ってしまうと、そのときの「今日」に存在した全てを、あの日の「今日」に置いてきてしまったような気がしてならない。
眠るのが怖くなる。
昨日の私が消えていく。
下書きのチラシの裏に「今日にさよなら」とだけ綴った私の感情や思考が、今日にはもう存在しないのと同じで、気を絶ち眠りを挟んだ世界は、昨日の私が知ることのない、また新規の世界なんじゃないかと思う。
この数行前の文を綴っていた私の見ていた世界もその感情さえも、今の私はわからない。
昨日のことは知らないけど、こうして生命活動を続けてはいる。そのためにしっかり睡眠も取る。
私は生きるしかないのだから。
夜型人間の私は、日付がかわるまえに眠ることがほとんどない。深夜0時から3時半くらいまでの、昨日に属するのか明日に属するのか曖昧な時間帯にひとり好きにすごす時をこよなく愛している。
太陽が昇って没むとこで刻まれる一日は、目覚めてから眠るまでの一日と思いのほかずれていて、気付くと少しだけ寂しい気持ちになる。
『今日にさよなら』
今日にさよならしたら、明日になる。
でも、明日からしたら、それは今日なんじゃないか。
じゃあ、『今日にさよなら』するって、どういうことだろう。
今日は楽しかったな
今日はちょっと疲れたな
今日少しだけ良いことあったな
今日しんどかったなぁ
毎日そんなことを考えながら帰り道を歩き、家に着く。
毎日同じペースで時間は過ぎていくけれど
1日も同じ天気でで同じ感情の日はないんだって
今日は少し頑張ることが出来たな
明日はどんな日になるかな
また明日よろしくて
今日はさよなら。
『今日にさよなら』
今日は仕事を休んで、朝から病院に行った。
初診で行って、のっけからムカつく先生だったけど、処方された薬を飲んだら、ここ一週間くらい飯もまともに食えないほど酷かった症状が一気に無くなった。
その後めっきり元気になってしまって、久々にとても充実した休日()を満喫したのだけれど。そういう日の翌日の仕事って、考えるだけでも嫌さがすごい。
今日にさよなら、したくないなぁ。
明日もがんばろ。
(今日にさよなら)
血圧の薬をこれ以上は出せないよと言われるだけ飲んでも
ようやくⅡ度高血圧に足を突っ込める私。
もちろん自慢ではないよ。
医者から毎日血圧手帳を書くよう仰せつかっている。
起きた時と寝る時に血圧を測定し、1日2回。
測るだけ測って血圧の過去メモリ見て
通院日前ギリギリに一気に書き上げる。
で、寝る前の血圧。今日にさよならしてもまだまだ寝ない。
ただ日にちは前の日の夜扱いなので25時だの26時だので表記している。
グラフを書くのにざっと就寝時間を見直す。
今日中に今日にさよならしてる日は皆無だわ。
(今日にさよなら)
今日にさよなら
さよならのお題多いね。
今日にさよなら…
今日という日は二度と来ないからね。
たまにはさよなら言ってもいいかもね。
でも言わないだろな。
言おうと思っているうちに、
昨日にさよならになってそう。
今日との別れ際って難しいよね。
今日にさよなら
今日だけじゃなくて
22日までさよならしたい
【今日にさよなら】kogi
記憶にも残らないように
感情に押しつぶされないように
【今日にさよなら】
深夜、家族が寝静まってから私は動いた。
自室のドアを音が出ないようにゆっくりと半分だけ開けて、スルリと抜け出す。
真っ暗な廊下を抜き足差し足、何処からともなくトテトテと近寄ってきた飼い猫に「しー」と人差し指を立てながらキッチンへ。
途中、トイレに起きてきた父親を壁に貼りつき気配を消してやり過ごして、父親が用を足しているスキに両親の寝室を横切った。
キッチンに到着、しかし、まだ電気はつけない。
父親が寝室に戻るまでは暗闇の中、息を殺して待機する。
成長期だからしょうがないのだ、どうしても小腹が空いてしまうのだ。
○清のカップヌードルを貪りたいお年頃、それと時間帯なのだ。
さあ、さっさと寝に行ってくれ父よ。
はやく食べ「うわぁっ、ビックリしたな、もう、電気くらいつけなよ?」
くそっ、今夜は失敗だ!
テーマ「今日にさよなら」
目覚めると、いつもちがう顔に挨拶する。
鏡に映る私は、黒い肌に縮り毛の坊主、大きな二重目に、分厚い唇の青年だった。
昨日はヨーロッパ系の金髪美女だったなと思い返して、この日がスタートする。
体を起こして、これでもかと顔周りを整えたあと、ダークスーツに身を包み始めた。
なんとなく体に染み付いた憂鬱な気分を感じ取って、ため息をこぼしたくなった。
体に従うまま、車に乗って行き着いた先は結婚式場だった。少し遠くから、花嫁と新郎が晴れた空の下、花道を通って祝福されるのを見ていた。
幸せいっぱいに満たされた空間の傍ら、私はなんとも言えない複雑な気持ちになった。
親友ー!とこちらに気づいて向かってくる新郎に、即刻この場から逃げたくなる体の衝動を抑えた。
もう来ないかと思ってたぜ
新郎は心底嬉しそうに私の肩を叩く。この人の笑顔を見て心が浮き立つが、すぐに闇へ落とされる心地がした。喜ばしいことなのに、青年だけがこの場で浮いていた。
私はできる限りの笑顔でおめでとう、幸せになれよと絞り出すように言った。
これがこの青年にとって最適解なような気がした。
新郎はありがとなとはにかんで、そのまま花嫁の所へと戻って行った。
家に帰ると、脱力するようにベッドへ倒れ込んだ。
そのまま堕ちるように眠りにつく。
もう、この人に目覚めることは無いだろう。
.今日にさよなら
今日にさよなら。
そう言えばこの日にあったものを客観視できる。
嫌なことやトラブルも。
あのときこうしてればが見えてくる。ああしようこうしようと見ることができる。
するとストンと落ち着いて眠れるのだ。
明日のためにも今日にさよなら。
今日にさよなら
また今日が終わる
楽しかった今日
悲しかった今日
嬉しかった今日
辛かった今日
色々な今日起きた出来事はもう戻ってくることはない
今日が終わる、そこであなたの抱く感情はなんですか
嬉しいですか?悲しいですか?
どんなことでも、自分が今日を精一杯生きることができたのならそれで良い。
また楽しい明日を思い浮かべればいい。
辛かったら逃げていい。それを卑怯だとかずるいとか言うやつは蹴り飛ばしちゃえ笑
現実でそれができないのなら
心の中でボッコボコにしちゃえ!
そのぐらい勢いのある、今自分は生きているのだなと感じられる今日にするために私たちは踠いて踠いて
やっと明日におはようって言えるんじゃないかな。
今日という日にさようなら、明日まだ見ぬ自分への旅立ち。明日の私が素晴らしいかわからないけど。本日の自分は素晴らしかったとおもえない。いや、思わなければならないかもしれない。そうじゃないと私の心が壊れそうになる。「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」名だたる文豪が引用した。かの言葉、私の人生っていうものはそういうものかもしれない。いつも精神的に向上を目指している。今日できなかったことを明日はできるように、今日わからなかったことを明日わかるように。そんなことしか考えていない。辛いことばっかりでもある。かの文豪の登場人物は精勤的に向上心がなくなったため頸動脈を掻っ切った。今の世の中でそんなことを出来る人はいないかもしれない。なあなあで物事を進めて、ヘラヘラ周りの空気に合わせて行動する。そんな日々が嫌いで仕方なかった、嫌いでも型を破れないままの私がいた。そんな今日はさようなら。かわっていく今日までの私にさようなら。
2024/02/19「今日にさようなら」蒼井真白
追記:初めて私の世界にいるキャラクターの思想を書いてみました。このこの名前は決まっていないけど、現在の当たり前となってることに対して不満、変えたいっていう気持ちが多い子です。
今日にさよなら
思い出したくもない日でも、
一晩寝てしまえば、さよならできる。
ほら、朝日が昇る。
嫌だった今日にさよなら。
新しい明日が今始まった。
「皆様が揃ったようなので点呼をとります。」
その聞きなれた言葉に心の中でため息をつく。言葉の主である美しい声と姿の彼女は『時の女神』である。白装束に身を包み、長く艶のある髪をなびかせている。
私は『時の遣い』の『子』。ネズミと呼ばれることがほとんどだ。ここに集まっているのは私と同じ『時の遣い』で、それぞれが自分の『時』を全うしている。人間界でいう十二支と同じ順番で自分の『年』になればここの遣い達を先導する役割を担う。そして自分の『時間』になれば舞を舞い続けるという役割がある。
ここ、天界の遣いが働かなければ時は進まないのだ。
「子。」
名前を呼ばれ素早く跪く。
「丑。寅。卯。辰。巳。午。未。申。酉。戌。亥。」
女神様は淡々と名前を呼び、跪いたのを確認すると顔をあげるように促した。そして自分の頭上にあった冠をそっと持ち上げて空間に固定した。そしてゆっくり頭を下げ、退出された。足音が完全に聞こえなくなるとみんなが立ち上がる。各々が自由に過ごしだす。おしゃべりをしたり、早々に退出したりと様々だ。
私は何も言わず白衣と袴を整えると浮かんだ冠を手に取る。その瞬間何も無かったはずの足元に舞台が現れた。すると突然太鼓の音がなり響く。始まりの合図だ。私は流れに身を任せる。音に乗り流れるように手を動かし、力強く地面を蹴りつける。
今頃人間界では日付けが変わっているのだろう。だがいつも私は疑問を抱えている。
_果たして時が進むことに何の意味があるのだろう。
時が進めば何が変わるのだろう。
天界に時という概念は無い。その為か時が存在していることに意味を見いだせない。
私は人間界を訪ねた。たまに見に来ることもあるためある程度の決まりは知っている。
_相変わらず暑苦しい場所だ。天界とはまるで違う。よくこんな場所で過ごせるな。
人間が溢れかえる交差点で眉を顰める。信号が変わったのを確認すると歩き出した。しかし、久しぶりに訪れた人間界に適応できず人間とぶつかってしまった。
「…った」
「いったぁ…」
お互いに後ろに転んでしまった。相手は人間の女の子のようだ。
「…すまない。見ていなかった。大丈…」
「手が…!!」
立ち上がり謝ると女の子は私の言葉を遮り慌てたように駆け寄った。言われた通り手を見ると少しかすり傷を負っていた。
「あぁ」
_全く気が付かなかった。仮の姿であるから痛みは感じないが、生身というのは不便だ。
「あぁ、じゃないですよ!ちょっとついてきてください!」
女の子は強引に私の怪我を負って無い方の手を引き小走りでどこかへ向かい出した。
日陰に入ると女の子は突然止まった。
「ちょっと待ってくださいね」
そう言って持っていた鞄から何かを取り出し抑えたあと綺麗な布で縛った。
_治そうと思えばすぐに出来るものを。
「これで大丈夫です!本当にごめんなさい!私浮かれてて…」
「はあ」
「私、明日誕生日なんです」
女の子は突然そういった。誕生日というのは人間が1年ごとに歳をとっていく制度だったはずだ。
「それで久しぶりにお母さんとご飯を一緒に食べれるから楽しみで」
嬉しそうに手に持っていた袋を覗いた。中には食べ物がたくさん入っていた。
「早く明日にならないかな〜」
その言葉を聞いて今までの疑問が全て解けた気がした。自分の中で止まっていた歯車が動き出すような、そんな感じだ。
「あっすみません、こんな話…私そろそろ帰ります!聞いていただいてありがとうございました!」
女の子はそう言うと小走りで去っていった。
私はしばらく布のあてられた手をじっと見つめた。
「ネズミ!時間だよ!」
「あぁ、わかった」
布を懐に仕舞うと冠を手に取る。
今日も私は舞を舞う。
誰かが待つ明日のため。
_今日にさよなら。