『花束』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
大切なあなたに届け心の花束。想いを伝えたい時、相手に興味を持ってもらえるようプレゼントを渡す気持ちで話す。これができれば幸せな日を過ごせるんだろな。
「今年は薔薇だ」
数年前から誕生日に花束が届くようになった。
差出人の名前は無い。贈られる花はいつも白い花が一種類。カードも何も無いから最初は気味が悪かったけど、花束自体に何も変なところは無かったし、何より花が本当に綺麗で、ありがたく受け取ることにした。
去年はカーネーション。一昨年は百合。その前は小振りの蘭だった。そのもう一年前は何だったか。スプレーマムだったか。
もう忘れてしまったけれど綺麗な白だったことは覚えている。部屋に飾るだけで華やかになった気がして、顔も名前も知らない贈り主にひそかに感謝した。
◆◆◆
「で、今年も届いたと」
「うん」
「それがこれ?」
「うん。見事な薔薇だよね。こんな大輪で、形が綺麗なのばっかり」
「去年はカーネーションだって?」
「うん」
「全部白?」
「うん、そう」
「·····」
「綺麗だよね。この薔薇もさ、見て。トゲが取ってあるんだよ。気遣いが嬉しいなぁ」
「·····」
「アンタ、引っ越した方がいいかもね」
「へ?」
「これ、棺に入れる為の薔薇だよ」
「――」
「ご遺体の顔に傷が付かないようにトゲを取って入れるんだよ」
「·····ど、え? ·····棺って、」
「スプレーマム、蘭、百合、カーネーション、だっけ? 全部白で? ·····それ、棺に入れるお別れ花だよ」
「なんで?」
「さぁ、嫌がらせ、かな? ストーカーかも」
「·····なん、なんで? 誰が、なんで? わ、私、毎年誕生日に楽しみにして·····、綺麗で、」
「引っ越した方がいいよ。なるべく早い内に」
「·····っ!!」
ガシャン!!
床に散らばる花びらが彼女の目には滲んで見えていることだろう。
――そうして早く、私の元に来ればいい。
END
「花束」
『花束』
私の父は花屋をやっていた。花が繋ぐ縁というのはいろいろとあるのだろうが、一番身近なものはこの店先で父と母が出会い、私が生まれたことだろう。そんな父が開いた花屋を今は娘の私が切り盛りしている。
「バラの花を100本もらいたい!」
開店すぐに勢いのあるお客様が入ってきた。バラの花100本というのは花屋をやっているとたまに遭遇する注文だ。だいたいは冗談や、やっぱナシでとなる類のものなのだが、ひとまず笑顔で対応する。
「お客様、即日ご入用でしょうか?」
「ああ!今すぐに頼む!今夜に間に合わせたい!」
内心舌打ちするが努めて笑顔で対応する。
「申し訳ありませんがお客様、只今この店に100本のバラのご用意は御座いません。本日中となりますとここよりも大きめの花屋を当たっていただくほうが……」
「いや!僕はこの店がいいんだ!なんとかならないだろうか!」
内心舌打ちが止まらない。人の話や都合を聞けない人間だろうか。
「失礼ですがお客様、私の店でなければならない理由をお伺いしても?」
「それはだな!かつて僕の父がこの店で同じようにバラを買ったことがあるからだ!」
そういえば、と脳裏に浮かぶ父が100本のバラを注文した客がいた、と話していた事があった。父は客の勢いに断りきれず、同業の花屋や卸業者に電話を掛けまくり、車をほうぼうへ走らせて花を調達したのだと疲れた様子で言っていた。
親子の遺伝というやつがあるのなら、間違いなくその時の客の子が目の前のこいつだろう。そして、親子の遺伝というやつが私にも当て嵌まるのなら注文を受けて立つことになるのだが、正直嫌だった。
「……お客様、お時間なかなかに掛かりますし、あとそれからお値段もけっこう張りますが、いかがなさいますか?」
「かまわない!よろしく頼む!」
正直嫌だったが、お客様に力強く注文されてしまったので受けて立たないわけに行かなくなった。父の気持ちが今ならとても良くわかる。これも親子の遺伝というやつか。
そうして電話を掛けまくり、車をほうぼうへ走らせてどうにかバラの花100本の花束が完成した。花代とラッピング代と手間賃ともろもろを乗せて請求した代金に、日が傾いた頃にやって来たお客様はさして驚く様子も見せずに気前よく払ってくれた。
「ありがとう!よくやってくれた!これで僕も胸を張ってプロポーズに臨めるよ!」
腕いっぱいの花束を嬉しそうに抱えてお客様は颯爽と店を後にする。いい笑顔だなと疲れた頭で思ってしまったので少し多めに見積もった代金に罪悪感が湧いてきたが、疲れたものは疲れた。後片付けにのろのろと取り掛かるうちに閉店になり、しばらくしてから先ほどのお客様が入ってきた。
「プロポーズを断られてしまった。しかもディナーが始まる前から」
100本のバラの花束を抱えて、とても落ち込んだ様子で。
「プロポーズが上手くいかなかったから、うちに恨み言を言いに来たんですか?」
疲れていたので接客態度を忘れていたが、閉店時間過ぎたしなと思い直した。
「いいや、逆さ!感謝と、謝罪を伝えに来たんだ」
目の前に100本のバラの花束が差し出される。
「無茶な注文をしてしまったのにやり遂げてくれてありがとう。貴女には迷惑をかけてしまったのに、成果を上げることができなくてすまない」
だから詫びの印として受け取ってほしい、とお客様は恭しく跪いて言った。花屋である以上、花束を捨てることはできない。それに罪悪感も存在を増してきた。だから花束を受け取って作業台の上に置き、跪いたままのお客様を立たせて言う。
「近くにいい居酒屋があるんで、飲みに行きましょう。ちょうど臨時収入も入ったので」
どういうことだいと言うお客様をいいからいいからと言いくるめて店を後にする。失恋の愚痴ぐらいは聞いてやろうという気持ちでの行動だったのだが、それが後々花屋へ婿入りさせることへと繋がっていくとはこの時点では誰にもわからなかった。
花が繋ぐ縁というのはいろいろなものがある。
『花束』
今日は親しき友人たちに花束を贈る日だそうです。
ええ、私が勝手に決めました。
いつもお世話になっているセバスチャンには、
カモミールの花束を贈ることにしました。
花束を受け取ったセバスチャンは
その場に固まってしまいました。
「あ、いえ…このようなものをいただいたのは
初めてで、その、ありがとうございます」
戸惑っている様子でしたが嫌がる素振りは
見せなかったので、私はホッとしました。
クンクンと花束の匂いを嗅ぐ姿に笑みがこぼれます。
魔術師にはライラックの花束を贈りました。
「ありがとうございます。私もお嬢様へ日頃の感謝として、花束を用意したのでどうぞ受け取ってくださいませ」
そう言って黒薔薇の花束を差し出す魔術師。
「まあ、おかしな魔法でもかけられて
いないでしょうね?」
「安心してください。私の想いしか込められて
いませんから」
青い目を持つレディには、
勿忘草と白百合の花束を贈りました。
花束を受け取った彼女は私に抱きついてきました。
いきなり飛びかかってくるとはなんてはしたない子!
彼女は花が綻ぶような笑顔で言いました。
「大好きよ!」
私の完全なる自己満足のために作った記念日ですが、
皆様に喜んでいただけたのならなりよりですわ。
おーほっほっほ!
あなたが最後に渡しにくれたのはシオンの花束だった
紫色の小さく可憐なその花は、なぜかさみしげな表情を浮かべている
私は花言葉なんて全然知らなかったから、この花束であなたがどんなことを伝えたかったのかわからなかった、が
理解したときにはもう手遅れだった
ー シオン 「あなたを忘れない」、「追憶」ー
彼は末期がんだった
余命3ヶ月との宣告を受けていたそうだ
入院して治療を受けるという手段もあったが、彼はあえて
入院せず、普通の生活を過ごしていた
そんなこと知らずに私は…
シオンにはもう一つ意味がある
「愛の象徴」
私は彼の前にシオンを置く
シオンは顔を上げ、蒼い空を真っ直ぐ見つめていた
花束に関して、誰にも話していない「しょん…」とする話がある。10年ほど前に、私の働いていたバイト先の店長が独立してオーナーになるというタイミングがあった。割とロマンチストな店長だったので、私はサプライズで花束を渡そうと思い、家とバイト先の間にある小洒落た花屋に初めて入った。奥には小さなおじいさんがムッとした顔で座っており、私はやや緊張しながら花束にする花を選んでいた。
「全体的にオレンジっぽくなるよう、1000円前後で小さい花束を作っていただけますか…?」
とおずおずと問うと、おじいさんはカウンターから這い出てきて、なれた手付きで花を選び、束ねてくれた。しかしラッピングの段階でおじいさんは深刻な顔になる。
「ラッピングはいつも息子に任せてるのでやったことがない」
えっ!最初に言ってくれれば考慮するのに…!そこにあるアレンジメント済みのやつ買いましたのに!しかし、不要な枝葉や花びらをとってしまったそのお花を戻させるわけにもいかん。
「…一緒にやりましょう…!!」
そして私はおじいさんと力を合わせ、苦心してラッピングを施していく。しかし、私とてなんのスキルも持っていない。できあがったのは花束というには無理のある、こどもが野山でつんできたような物体だった。見様見真似でくるんと巻こうとしたリボンがくちゃくちゃとよじれて、哀愁がただよう。
私は面白おかしく事情を話して店長に花束を渡した。店長は…笑って喜んではいたが、同時に、目に哀れみや寂しさのようなものを湛えていた。
誰が悪いでもないこの出来事を、私は花束を見かけるたびに思い出すのだ。
「玲人(れいと)が好き」
帰り道、俺は人生で初めて好きな人に告白された。
「___って事が......ちょっと玲人!?!?服服!!」
「え?......ぅわっ!!ヤベッ!!」
俺は拓也(たくや)の家で、お昼に食べていたパスタのミートソースを服に溢していた。慌ててティッシュペーパーで取るも、シミが出来てしまった。これはなかなか落ちないかもしれない。床を見るが落ちていないらしい、良かった。
「玲人何かあった?最近ずっとぼけぇぇーっとしてるし」
「ちょっと言い方。まぁ.........色々あってさ」
「なんだよ色々って」
「...色々」
まさか告白された、だなんて言えるわけがない。
「.........もしかして帰り道なんかあったのか?」
「えっ」
「葉瀬(ようせ)と喧嘩でもしたのかよ」
「してないっ、けど......」
俺はそこで黙ってしまった。あぁもう、なんでこうなるんだよ。
俺はあの日を思い出す。
好き、と言われたあと凄い爽やかな顔で『返事はいらないよ。ごめんね』と言って、彼女は走って帰ってしまった。
俺はずっと、葉瀬は拓也が好きなんだと思ってた。だから俺は驚いてすぐに返事が出なかったんだ。
俺も好きなのに。
拓也は俺の服の代わりになるものを探している。
「......拓也」
「ん?」
「...伝えそびれた話って、どうやって言えばいい?」
「伝えそびれた話?...うーん、それとなく匂わせるとか?はい、服」
「ありがと」
俺は拓也から服を受け取る。
「あ、でも葉瀬にやるんだったら察せ系は止めた方がいい。そういうの嫌いだったはず」
「え、そうなの?うーん...」
「葉瀬にならどストレートに伝えるのが一番言いと思うよ。それが駄目なら花とか。意外と花言葉とか知ってるし、察せ系の中では全然許容範囲なんじゃない?」
「花...か」
確かに、彼女は子供っぽい所があるがそれはその場を盛り上げるためのキャラ作りで、素は凄く大人びていたはず。相手の事を嫌ってほど気を遣っている。
そんな彼女が花言葉を知っていても不思議ではない。
「......花にしようかな...うん、拓也ありがとう。スッキリしたよ」
「良かった。またなんかあったら言えよ?玲人の落ち込み顔は見たくねぇからな」
そう言ってニコニコと笑う。
拓也も葉瀬と似て素は本当、相手の事を嫌ってほど考えてるよね。
そして、週末。葉瀬と会う約束をした日。拓也と話すと善は急げだとかなんだとかで、その場で約束をさせられた。でもこれで良かったのかも。
俺は早速お花屋さんに足を運んだ。
カラン、コロン
「...あの、すみません」
「はい」
「その......俺、花をプレゼントしたいんですけど......どんなのを渡したらいいですか...?」
実は俺は極度の人見知りで、お店の人に話しかけるのも少し怖かったため声が震えてしまった。
「相手の方が喜ぶようなお花にしましょう。例えば...その方の好きな色の花などありますか?」
「あ...青色とか、水色が好きです」
「成る程...」
「...あの、その...彼女、花言葉とかよく知ってて......想いの入った花がいいかなって...」
「失礼ですが、どのような想いでしょうか?」
「えっと......この前告白されて...同じ気持ちだって、返事をしたくて...」
「わぁ、素敵な話ですね...!」
「ありがとうございます...」
でも店員さんは優しく一緒に考えてくれる。ここのお花屋さん初めて来たけど、ここで良かった。
店員さんが俺の考えている花の前に連れていってくれる。そこには俺の希望通りの、青く小さくて可愛らしい花があった。
「...この花はいかがですか?」
「これは?」
「勿忘草と言います。花の色によって花言葉が違うんです。この青い勿忘草の花言葉は『真実の愛』『誠の愛』です。夫婦やカップルの記念日などによく送られています。ドライフラワーにして、栞にも出来るんです。どうでしょうか?」
花言葉もいい......よし。
「...これにします。これでお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員さんは花を手際よく包んでいく。流石プロだな、とぼんやり眺めていた。
「お待たせしました」
「わ......凄い綺麗...!ありがとうございました」
「いえいえ」
葉瀬も花を見るのが好きだと言っていたはず、だから。
「また来ます......今度は彼女と」
「楽しみにしています」
言えた。ちょっと恥ずかしかったけど言えた。
また来ます、って。
花も綺麗だ。俺は渡すのが楽しみになっていた。
「...とは言ったものの」
直前まで来るとやはり怖じけついてしまって、なかなかインターホンを押せない。
ちゃんと言うんだ。そのためにここに居て、花も買った。押せ、押すんだ!!
俺は震える指でインターホンを押した。
はーい、と声がしてしばらくすると彼女が出てきた。
「玲人...?えっとそれは......」
やはり花を見て驚いている。
「勿忘草、だよ...」
「勿忘草?」
「...あのさ...この前の告白だけど...」
「え、あれは」
「...っ俺!」
いきなり出た大声に葉瀬はビクッ、と肩を震わせる。
俺は深呼吸をして、葉瀬を真っ直ぐ見る。そして
「俺も、葉瀬が好き、ですっ、これ......受け取ってくださいっ」
彼女に花束をぐいっ、と渡して伝えた。
「...え?玲人は秋が好きなんじゃ...」
「よ、葉瀬が好き...です...」
「ほん、とに?」
「本当です...」
顔が熱い。
たぶん今、顔真っ赤なんだろうな。
手も足も震えてきた。
花束落としそう。
受け取ってくれなかったらどうしよう。
そんな事が俺の頭の中に浮かんでくる。
「......俺、じゃ駄目ですかっ」
絞り出した声がこれか。もっとカッコよく、俺は君しか見えていないよ、とか君が思ってるより好きだよ、とか言いたかった。
俺は震える呼吸で花束を見つめる。
その時、手が伸びてきた。
カサ、と花束を取る。彼女はそれを抱えて笑う。
「駄目じゃないです。私も玲人が好き、私と付き合って貰えませんか?」
告白してきた時の爽やかさと似ているが違う。
本当に、凄く嬉しそうに笑うね。
「...俺でよければ、よろしく、お願いします...」
「......玲人、バグしていい?」
「え?う、うん。わっ!!」
俺が頷くと葉瀬はガバッ、と飛び付いてきた。ぎゅうぎゅうと肩を抱き、すりすりと寄ってくる。
「...っ...私もこれからよろしくっ!!」
可愛らしい声が願いが叶ったかのように話す。
俺も葉瀬を抱きしめ返した。
人生で一番幸せだと思った瞬間だった。
お題 「花束」
出演 玲人 葉瀬
私は『自分を花束で表せ』と言われたら、紫、黄色、緑のチューリップを1本ずつ手に取ってその3本で花束を作る。
私を知らない人は、この花束からどんな印象を受けるだろうか。
私を知っている人は、私らしいと思うだろうか。
これは私が大切にしたい感情だ。私らしいかは分からないけれど、これ以上もこれ以外もない、私の花束。
(花束)
たった一度の関係だったのに、店先に並んでいた500円の小さな花束が嬉しくて。
浮かれた私は、遊ばれたことに気がつかなかった。
気付いた時には、花弁は床に落ち、彼はいなかった。
それから、花を見るだけでも嫌悪を抱いた。
遊ばれたことに気がつかなかった自分を、一番嫌だと思った。
セフレだとか、元彼と友達だとか。
私には合わないようで、その後彼からの久しぶりに来た連絡も無視した。
いつか私は、もう一度。
花束を見て「きれい」だと思えるだろうか。
色んな花があるから、
ひとつだけ悪い花言葉でもわからないでしょ?
私のそんな気持ちは知らずに、
無邪気に喜ぶ君を見る
いつ、言い出せるのかなぁ…..
幼い子どもがくれた道端の一輪のたんぽぽ。
それは花束と同じ価値があると思うんだ。
【花束】
花束
誰かにあげたことも渡されたこともない
だからここに書かれてある花束のエピソードを見て
ほっこりした
花がきれいなのはもちろん
花を贈ろうとしてくれたその気持ちが嬉しい
贈る側も喜んでくれるかなと渡すまでのドキドキと
渡した後の相手の反応を見れるのが嬉しい
贈ったことも贈られたこともないけど
勝手にそんな光景を想像して癒されました
祝いの花束
誰かを祝福する為の花たち
弔いの花束
誰かを偲ぶための花たち
あとは何があると思う?
考えてみて
ちょっと人と違うことを考えられる君ってなんだか特別って思わないかい?
誰かと一緒じゃなきゃ孤独を感じて
誰かと違うと劣等感。
ほんとに?
そう思ってる?
心の何処かでは少しは自分が特別だと思ってるんじゃないかい?
思っちゃダメなことなんて無いんだよ。
ここだったら誰が誰かなんて分からないだろ。
花屋さんの前を通りかかった。
私は白い薔薇と青い薔薇の花束を見ると
彼を思い出す。
彼から花束をもらった時
ホントに嬉しかったことを
今でも忘れない。
でも彼はもう此処には居ない。
花束を見ると
嬉しかった気持ちと悲しい気持ちを
思い出してしまうから
私は花屋さんを見るのをやめた
─────『花束』
そうだ、花束を贈ろう。とっておきの花束を。
花束だ、花束が1番彼女に似合うだろう。
本数は多い方が喜んでくれるだろうか。
それとも花の意味を調べてから贈った方がいいだろうか。
彼女はキレイだった。花のように。そこら辺の雑草なんかとは大違いで、向日葵みたいな、他より頭1つ抜けてキレイだった。すらっとした身体にスズランのように白く透き通る肌、可憐な瞳、彼女の何もかもが私を魅了した。
彼女の声がどうしても聞きたくて、自然風を装ってわざとぶつかったら、そこらの人には到底出せない、綺麗な、綺麗な子をしていた。まさに鈴のなるような声、だった。
彼女の事が好きになった私は、何とか会話にこじつけて、数日後会う約束をした。
約束の場所はオシャレなカフェだった。彼女が指定した場所である。
カチコチになりながら先に座っていると、後から白い服に包まれてやってきた彼女が来た。
面と向かって話そうとするとどうしてもぎこちなくなってしまう。
彼女は店員にアイスティーを頼んで、私はコーヒーを頼んだ。
コーヒーは苦手である。だが彼女の前で頼んでしまった手前キャンセルなど出来ない。(というかカフェで頼んだ後にキャンセルなんてできるのだろうか?出来たとしても恥ずかしいのでしたくない。)
だからせめて砂糖をたっぷり入れて飲むと心の中で決意。
そんな決意をしている中無言の空気に耐えられなくなったのか彼女から話しかけてきた。
彼女の言葉は一言一句覚えたいのだがなにせお嬢様言葉なのでお嬢様という言葉に無縁な私は覚えることが叶わなかった。なので要約しながら語らせてもらう。
何故私をお茶に誘ったのかと聞かれ、とてもあなたが綺麗だったからと言ってしまった。
見た目で判断するクソ野郎だと思っただろうか。私に話しかけてくれたのにこんなクソみたいな回答で申し訳ない。
そうだったのですか、と微笑み受け流してくれた。なんて優しい方なんだ。そんな彼女にまた惚れた。
今度は自分から質問しようと思ったがなかなかいい質問が思い浮かばず、なぜか突然好きですと彼女に愛の告白をした。本当になんでだ。いくらなんでもムードと脈略が無さすぎる。言った瞬間から後悔した。あぁ、なんでこんなこと言ってしまったのだろう、普通もっと親交を深めてから言うものであろう。と自分を責めに責める。
するとまた彼女は微笑んで、私もですよ、なんて言葉を私に投げかけた。その時の感情と言ったら驚いたの一言でしかない。驚きと、驚きと、戸惑い、その3つである。
じゃ、じゃあ私とお付き合いを…?と聞くけば、ええ、とまた微笑んだ。
微笑む姿が女神のようだった。
そしてカフェから出ると私は花束を贈ることにした。
花屋について、桔梗の花束を彼女に贈り、正式なお付き合いが始まったのであった。
『花束』
卒業祝いに、花束をもらった
最後のセーラー服に身を包みながらその花束を抱えて
一人で海まで歩いた。
3月の海 誰もいない
午後16時。
もう空は青黒かった
だいすきだったこのセーラー服も、
すきという想いをあの子に伝えられなかったことも、
卒業目前で喧嘩して仲直りできなかったその子も、
私の 中学生 も、
ぜんぶ
ぜんぶ
終わってしまった。
あんなに あっさり
なんか ムカついた
なんか 悔しくなってきた
なんか 寂しいし
なんか 嬉しくもあるし。
このムシャグシャな気持ちを海に飛び込んで消そうとした
花束を抱えて
靴を脱いで
勢いよく走った
砂浜に足を取られないように
「 バシャーン!!」という音と共に
私は海に飛び込んだ。
3月の海
つめたい
花束もぐちゃぐちゃになった
でも、
でも、
なんだかすこし
なんだかほんのすこしだけ
頭も冷めてきた
私の中学生は終わった
Jk にはなりたくなかった
だってまだずっと少女で居たかった
中学生で居たかった
中学生で痛かった。
まだ なにも変われてないのに
まだ わたしクラスの子みたいに大人になれないよ
海に浮かびながら わんわん泣いた
目が腫れた
ぐちゃぐちゃになった花束をかき集めて
靴を持って裸足でアスファルトの上を歩いた
帰り途中、
'すきという想いを伝えられなかったあの子' に遭遇した
なんでそんなに濡れてんだよ と苦笑いで心配してくれた
家からバスタオルを持ってきて
頭を拭いてくれた
だから、それが嬉しくて つい、言ってしまった
「すき。」
あの子 また苦笑いだった
でも俺も好きだよって 言ってくれた
顔が、耳が、心臓の奥が ポッ て赤くなった気がした
翌日 39度の熱が出た
なんだかしあわせだった
< 花束 >
2024. 02010.
8:03 am
君に花束を
最後の日
ありがとうとごめんの
気持ちも込めて
贈るよ
独り暮らしを始めてからの3年間は家族と距離を置いて生活している。拘束のない楽さを感じながらも、歳を重ねた両親らに対し、何ができるかを考えてしまうことがある。
一緒に食事に行ったり、旅行に連れて行ったりできればいいのだろうが、時間的にも心理的にもハードルが高いと感じてしまう。
ときには花束でも持って帰ってみようか。言葉は悪いかもしれないが、「楽にできる」親孝行を模索する朝だった。
花束を君に持ってきたんだ
そう言って
海が見える崖に花束を置いた
君が最後にいた場所
別に墓というわけでもない
だって遺骨は残っていないから
まず作りようがない
だけど
墓は残せなくてもこの気持ちは残ってしまった
君という存在を忘れないように
君が生きていたという証明のために
花言葉がなんなのかわからない
君が好きな花の束を
この場所に捧げた
お題『花束』
バイトの最終日に、出入口で待ち伏せしていた先輩に花束を渡された。
彼女はそれを、作り笑いを浮かべながら受け取った。
家に帰ると、花束を見た母親は「綺麗だね」と花瓶に生けた。娘の恋人が気に入らない父親は「おまえの彼氏よりいいんじゃないか」と言った。
たしかに、先輩の好意は知っている。わかりやすかったからだ。
しかし、必要に駆られ連絡先を交換したところ、すぐに返信を返さないと病んだメッセージを送ってきて、挙げ句の果てにはリストカットの写真を送ってこられ、もう関わりたくないと思っていた。そんな個人的な話を、親に話すつもりもなかった。
だから、親の言葉にも苦笑いだけ浮かべて返した。
花はいつか散るもので、しかしまさか、彼女自身の花を散らすとまではその時は思っていなかった。
『花束』