サイコロ

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2/7/2026, 12:57:01 PM

―どこにも書けないこと―

私は、努力している人を見ると、吐き気がする。 

拍手も称賛も、全部、うるさい。 

「頑張れば報われる」

そんな顔で立っているのが、どうしようもなく気に入らない。

努力なんて、才能の言い換えだ。 

そう思わないと、やっていられなかった。
時間を使える余裕、信じ続けられる心、折れても立ち上がれる強さ。
それを全部を持っているくせに、「続ければできるようになるよ」なんて言われると、
胸の奥で何かがぐちゃりと潰れる。

私は、努力できない。 

正確に言えば、
努力しても、信じられない。
続けた先に何もなかったとき、
自分が完全に空っぽだと認めてしまう気がして、
最初から本気になれない。

だから、途中でやめる。

途中で諦める。

「本気じゃなかったし」と、逃げ道を残す。
それなのに、
本気で走り続けて、
ちゃんと結果を手に入れる人を見ると、
なぜか裏切られた気分になる。

ずるい。

本当に、ずるい。

私が守ってきた言い訳を、
あの人たちは、何も言わずに踏み越えていく。
汗を流して、歯を食いしばって、
私が避けてきた場所に立っている。 

嫌いだ。

尊敬なんてしていない。

ただ、自分が惨めになるから、

視界に入ってほしくないだけだ。

それでも私は、
努力する人の失敗を、心のどこかで待っている。
「ほらね」と思える瞬間を、
密かに、卑しく、期待している。

私は、もう努力しない。 

諦めたのではなく、選ばなかっただけだ。

頑張らない理由を並べるのも、

誰かと比べて傷つくのも、


全部、疲れてしまった。


あの子と一緒にコンクールに絵を出すとき。
あの子は
“めんどくさい”
“センスないから無理”
“◯◯は絶対入賞するじゃん。絵うまいし。”

そう言うあの子の絵はいつも輝いていて、

惹き込まれる魅力があって、

それなのに。

謙遜して。

心から私はあの子の絵を好きだと言っていたのに。

踏み躙られたような気がした。

否定されたような気がした


結果は、















あの子だけ入賞して、私だけ外れた。











先生は、あの子を褒めた後、

“◯◯さんだけ入賞したけど◯◯さんも県の審査までは入っていたと思うよ。”

そう言って。

慰めてるつもりか。

情をかけているつもりか。


先生の隣で、あの子は謙遜しながら喜ぶ。


私は。
それを横目に。
先生の言葉を遮るように。
背を向けて別の友達と喋り出す。
先生とあの子の声が聞こえないくらいに。
いつも通り明るくうるさく友達と一緒に喋る。
それなのに先生とあの子の声が後ろからよく聞こえる。
私が誘わなかったら描くことすらしなかったくせに。
私はちゃんと期限の数日前に先生に出したのに。
ちゃんと出した私の前で完成していないと。
それなのに正直に言わずにズルをして。
あの子は忘れたと先生に嘘をついて。
あの子は1日遅れて出して。
それが先生に通って。
許せなかった。
なんで。

一瞬で今までにないほど言葉が浮かんだ。

もう嫌だった。


疲れた。
 




伸ばせるはずだった手を下ろして。 







可能性という言葉から目を逸らす。










夢も期待も。












最初から持たなければ失わずに済む。















走り続ける人たちの背中をもう追わない。


















追えなかった自分を、これ以上責めもしない。






















私はここで止まる。




 









努力という選択肢を、















静かに、意識的に、捨てる。
















何も変わらない明日を受け入れて、
















何も起こらない今日を繰り返す。


























どうせ無理だし。
















題名:【選択肢も結果も2つのみ。】





 






2/6/2026, 10:19:12 PM

―時計―

時計の針は、いつも正しい。

1秒ずつ、規則正しく進む。

遅れることも、迷うこともなく進む。

設定された通りに、ただ時を刻み続ける。

そこに感情はなく、躊躇もない。
嬉しいから早まることも、
悲しいから立ち止まることもない。

時計の針は、世界に等しく時間を配る。
今日も昨日も明日も、
同じ速さで、同じ方向へ。

それなのに、
その時間を受け取る私たちは、
いつも同じ形ではいられない。

止まってほしい瞬間ほど、針は静かに進んでいく。

早く過ぎてほしい夜ほど、時を刻む音がやけに大きく聞こえる。

針は、何も選ばない。
けれど私たちは、
流れていく時間の中で、
手を伸ばしたり、
そっと離したりしながら生きている。

忘れたいと思った記憶ほど、
光を帯びて残ってしまい、

大切にしたかった想いほど、
言葉にならないまま胸に沈む。

時計の針は、
それらを知ることなく、
今日もまた、一秒を次の一秒へ渡す。

私は、その音を聞きながら、
気づかないふりをしていた「それ」に、
ようやく名前をつけようとしていた。

けれど針は、
その答えを待つことなく、
もう次の時刻を指している。


題名:【模範解答なし】

2/6/2026, 6:14:31 AM

―溢れる気持ち―

何気ない日々、何気ない日常、何気なく過ぎていく時。そんな代わり映えのしない、何気ない日常は平々凡々であると言えるだろう。だから、いつものように、今日という日も、昨日や明日と同じ箱にしまい込もうとしていた。ただ、学校に行って、いつものように、何気なく授業を受けて、何気なく友達と笑って過ごす。

けど、笑っているのに、幸せなはずなのに、いっぱい遊んでいる。それなのに、なんか、なにかが、心の奥底で渦巻いているような、違和感があるような、気がしていた。

そういえば私、SNSの綺麗な写真集を見て、「この場所綺麗だな」「羨ましいな」「私の周りにこんな綺麗な場所ないな」とか思ってたっけ。

そのとき、「君」が脳裏に浮かんだ。

「見て、空が綺麗だよ」

だなんて、何気ない日常の一部であるそれを、心の底から綺麗だと目を輝かせている君。その時は軽く受け流していたはずなのに、気づけば私は、いつのまにか、君に感化されていた。

何気ない日常の一部として、どうでもよかったはずだったのに。

これまで知っていると思い込んでいたはずの世界に、ふいに色が宿る。

音が流れ、光が差し、草木が唄い出す。

君の笑い声が鮮明に聞こえる。

立ち止まる理由もないはずなのに、影ですら美しく見えた。

見える。聞こえる。

当たり前だと思っていた感覚が、今になって一つずつ輪郭を持ちはじめる。

世界はずっとここにあったはずなのに、今日になって、ほんの少し広がった気がした。

その瞬間、何気ない、という言葉は、
私の中で意味を失った―――。


題名:【世界というキャンバス】