→短編・想い出箱
僕はパソコンを自作している。自分で組み立てたものが動く達成感と、パーツの組み換えが効くのが何とも楽しい。
ケースだけは買い換えていなかったのだが、先日とうとう新調した。
「まるでテセウスの船ね」
妻が横に寄ってきた。
なるほど、僕の愛機問題は同一性の問題に近しい。僕の愛機に、初期のパーツはもう残っていない。それでも僕の愛機と呼べるのか、感覚派と実体派のバトル。
「ケースまで変わってるんだから、テセウスの船よりも同一性はないけれど、コイツは昔から変わらない僕の愛機さ。
何せ想い出が詰まってるからね。例えば、君にパーツ選びを付き合ってもらった時のこととかね」
僕の言葉を受けて、妻がニヤッと笑った。
「例えば、動かないって大騒ぎして電源のコード?を挿し忘れてたときのこととか?」
寄りかかってきた彼女に対抗するように、僕も寄りかかる。
「あれ一回きりだし、割とあるあるなんだよ」
「そういうことにしといてあげる」
僕の愛機には、こんな想い出がたくさん詰まっている。
テーマ; たくさんの想い出
→短編・冬に備えよ!
冬になる前の今、
がんばれ、私!
通勤では一駅前で乗り降りする。
会社のエレベーターは使わない。
食事は適度に減らして栄養重視。
ストイックにストレッチも忘れずに。
冬になる前に、とにかく体型を絞り尽くす。
秋の味覚よりも冬の怠惰。
コタツ亀になったら最期!
出れないんだよ〜。
動けないんだよ〜〜。
そしてアイスとか食っちゃうんだよぉ〜〜〜。
テーマ; 冬になったら
→短編・お兄ちゃんとぼく
ぼくたちはそっくりで、お兄ちゃんは右、ぼくは左って決まってるんだよ。
ぼくたちは、後を追い合って進む。そうしないと前に行けないの。
それでね、オヤスミの時はお隣同士で並んでお話しながらゆっくりするの。
それなのに……
いつも横にいるお兄ちゃんがいなくなっちゃった!
お兄ちゃんとぼく、いっつも一緒だったのにっ。
エーン、エーン。
お兄ちゃん、どこに行っちゃったの?
ぼく、はなればなれは嫌だよ。
「もー! 玄関の靴、脱ぎっぱなし! ちゃんと揃えなさい!」
「あとでやろうと思ってたのー!」
そんなやり取りの後で、玄関のあちこちに脱ぎ散らかされた靴が、男の子の小さな手で一組を成した。
揃えられた靴は、仲良げに寄り合いおしゃべりをしているように見えた。
テーマ; はなればなれ
→呟き・100。
ごきげんよう。
子猫のように気まぐれな毎日のテーマに右往左往の一尾(いっぽ)でございます。
なんと! 今日で仮住まい生活が100日となりました―っていきなり何のこっちゃ?ですな。
はい、あれは今から100日前の、8月の夏の盛りでございました。その日のテーマ「蝶よ花よ」を書き上げた翌日、何故か知らんがアカウントが消えちゃった、もしくは(データは残ってるので)アカウントと切り離されてしまったのです。難しいことはわからん。この書き方であっているのやも不明。デジタルの海、怖いねん。IT雑魚やもん。
迷惑覚悟で運営様に何とかなりゃしませんかとご連絡を差し上げたものの、それまで待ってられないお子ちゃま気質。もう一度アカウントを作り直しました。
故に、「本宅」と切り離された「仮住まい」を名前に引っ提げることにいたしました。
そして、あれから100日。仮住まいに馴染み、むしろ心地よく感じている今日この頃。
もうこのままでいいや。アカウントも名前も。
デジタル空間の別荘暮らしってのも粋な感じしません?
別荘には、滲み出る大人の優雅さがあるのさ、ヘヘヘ。
今後も別荘から、一方的に貴方様方に青いラブシールを送り続けるぜ!
モチのロンで、お読みくださる方々の青シールはありがたく頂戴しておりますです! 感謝!
ちなみに私は猫派であり、マナティー・ナマケモノ派です。
テーマ; 子猫
→短編・あきふう、あきかぜ。
「はい! バックダンサー! 秋をイメージさせる踊り!」
演出家の指示に、数人のバックダンサーがそれぞれの解釈で踊り始める。
落ち葉を踏み鳴らすような踊り、何かを食べるような素振りを盛り込んだ踊り、晴れ渡った高い空を伸びやかに表現する踊りなど、それぞれの表現力に演出家はウンウンと納得顔で頷いた。
「よし! そのイメージとテンションを維持して」
そこに演出助手が慌てた様子で現れた。何事かを演出家に耳打ちする。
見る間に神妙な表情に変わった演出家は、「アキカゼの日常って何だよ!」と劇作家からの指摘に不満を吐き捨てた。
「バックダンサー! さっきのところ、もう一回! 秋のイメージじゃなくて、もっと具体的に『秋の風』イメージなんだとさ!」
修正やむなし。「秋っぽい」と「秋の風」では舞台に与える印象は大きく違う。
ちなみに、脚本にはこう書かれていた。
『秋風の日常が具現化し、主人公を取り囲む。』
人に伝える文章って難しいね☆
テーマ; 秋風