→短編・追い風、向かい風
ペットのつむじ風ふぅちゃんを誘って散歩に出た。冬の乾燥した気候が大好きなふぅちゃんはご機嫌で、くるくる舞いながら私の背中を押してくる。
「ちょっとふぅちゃん! 追い風すぎて倒れちゃうよ!」
あまりに風圧に私はつんのめった。ふぅちゃんはあっという間に私の前に周り、私を支えてくれた。
「ピュイ!」
嬉しそうな声で鳴いて、ふぅちゃんは私にまとわりつく。
よしよし、いい感じ。まだバレてないぞ!
今日は年に1回の健康診断日。何とかふぅちゃんに気取られないように動物病院まで連れて行かなくてはならない。去年はあと少しってところでバレて苦労させられた。
あまりに順調に進むものだから、拍子抜けしてるくらい。フフ、これなら早く終わりそうだ。
絶好調! よしよしよしよ……あれ?
体が……、前に! す、進まない!!!
「ふ、ふぅちゃん?」
いつの間にか、ふぅちゃんは私の前で向かい風を吹かせ始めていた。
返事もしない。
しまった、私の浮かれ具合で病院行きがバレたようだ。
「ふぅちゃん、今日は健康診断だから痛いことは何もしないよ? だから止めて、ね?」
説得は遠くに吹き飛ばされた。向かい風、キツイキツイ!
私のつむじ風ちゃんは、すっかりつむじを曲げてしまったようである。病院行きは難航しそうだ。
テーマ; 追い風
→短編・君はどこに?
私の体を紐解いてみた。
皮、骨、脂肪、内臓、神経、血管、血液など体液、さらに細胞へと。
体は細胞のコングロマリットだ。
細胞が集まって組織をなし、複数組織が合わさり体の中で一定の機能を持つ。
微弱な電気信号を元に、自分たちの働きを繰り返し、最終的に体を生かす。
そこに個人的な意図はない。
ほぼどの人間でも同じような細胞構成がなされている。
私が私を解体したのは、『個人』という君がどこにいるのか知りたかったからだ。
君は他の人間と私を区別する大きな要素である。
君と一緒に、これまで大きな決断を数多く行ってきた。私の立役者たる君。そんな君に感謝を述べたい。
しかし私は、心臓の中にも脳の中にも君を見つけることはできなかった。
君はどこに?
私はどこに?
私は誰だ?
テーマ; 君と一緒に
→短編・情報源
冬晴れの日差しを、日干しレンガに集めると雲母のような層を持つ結晶になる。印象派の絵画に登場しそうな白く焼けたレンガというとイメージしやすいだろうか。
日結晶はちょっとの衝撃でも壊れてしまうので、細心の注意を払ってレンガから剥がし取り、セルロイド製のケースに保管する。
この結晶を、ごぼうのポタージュにほんの少し加えると、冬の晴れた公園を歩くような澄んだ土の香りがするらしい。
友人のグリーンフィンガーズとノームとお茶をしたときに聞いた話なので、確かな情報だと思う。
テーマ; 冬晴れ
→贅沢な生活
2日から発熱でベッドの住人をやっとります。今年の正月はまさに寝正月でした。
ようやく熱は下がったみたいですが、喉が焼けるように痛い。それ以外の症状はない。
発熱外来の予約が取れずに自宅療養しております。
どうせ何もできないんだし、と開き直って読書三昧。
図らずも今年の抱負の良いスタートが切れました。
喉元過ぎればなんとやら(過ぎてないけど)、こういう正月も悪くないなと読み終わった本を積み重ねて、新しい本に手を伸ばす。
頭に活字が満ち満ちています。
テーマ; 幸せとは
→学習の成果
朱色は魔除けや不老長寿を象徴する色である。古代は丹と言われていた。
日の出を見るたび、その朱色の力強さと包容力にさもありなんと納得させられる。
一方、同じ朱色でも夕日はオレンジ色が強く、薄紅の空も相まって、懐古を呼び起こす。
朝日夕日ともに中空にあるよりも近く感じられるが、実際には南天にある太陽が一番近い。昼間の温かさを思えば頷ける。
地球の自転と公転を習った学生時代の知識。
もしその知識がなければ、単純人間の私は天動説を信じているだろうなと思ったりする。
テーマ; 日の出