→梨とギャンブル
ここ数日のあいだ、高熱にうかされていて、身体の寒気とは裏腹に、喉は熱で渇ききっていた。
猛烈に梨が食べたくなった。
果汁を保つために果肉があるかのような、「当たり」の梨。林檎よりもさっぱりとして瑞々しい果汁は、まさに甘露ってヤツだ。
呼気の熱さを苦々しく感じながら、布団の中で何度も梨を想った。
ところで、話はガラリと変わるのだが、数日前に熱に浮かされて奇妙な夢を見るだろうな、と書いた。
うん、見た。
なぜか私はギャンブルの卓に座っていて、トランプのカードが配られていた。
対戦相手の女性に見つめられ、観客の視線を浴び、ディーラーに目線でゲームの進行を促されたが、どんな種類のゲームなのか皆目見当もつかない。ポーカーなのか、ブラックジャックなのか……。しかしそのどちらにせよ、それ以外のゲームにせよ、ギャンブルに詳しくない私には、その場で何をしたら良いのか全く分からなかった。
だから「どうしていいのかわかりません」と素直に白旗を揚げたら、そこにいる全員にもれなく嗤われた。そして目が覚めた。
とても不条理だと思った。まぁ、ギャンブル自体、そんなもんか。
果たして小説のネタにはならないが、ここでのネタにはなったので、良しとしよう。
テーマ; 梨
→ここ2日ほどの猛暑について。
歌うようなサヨナラが
季節外れの熱波となって
風に乗って町から街へ
夏のお別れの挨拶だと
誰にも気付かれずに
人々のあいだを縫っていった
テーマ; LaLaLa GoodBye
→ネタ探し
どこまでも、高熱。
私と世界の輪郭が、曖昧だ。
でろんでろんの身体、
ぶわんぶわんの頭、
どろんどろんの思考。
このまま入眠したら、
トンテモナイことになりそうだ。
どうせなら、小説のネタになりそうな
荒唐無稽な夢を見るくらいのご褒美がほしい。
あと、早く熱が下がってほしい。
健康のなんたるありがたいこと!
テーマ; どこまでも
→短編・齟齬
居酒屋で、二人の女性が飲み交わしている。
「あ~、マジで仕事辞めたい〜」
「今日だけで3回は聞いてるわ」
「辞められんもん〜。言論の自由くらい許してよ」
「もし宝くじの1等が当たったとしたら、仕事辞める? 何したい?」
「もちろん仕事は即ヤメ。で、海外に行ってぇ、キャンピングカー買ってぇ、目的地無しのその日暮らし。アメリカとか大っきい土地の分かれ道でさ、右行くも左行くも、その日の気分」
「あ~、それって未知だね。未知の交差点」
「どうした? どうしてそんなにクーってなってんの? 普通に交差点って道にあるよね?」
「深いなぁ〜。交差点に未知がある! 哲学極まってんじゃん」
「て、哲学?? そんな話、してたっけ? じゃあ自動車教習所はアテナイの学堂ってこと??」
「未知(↘)?」
「道(→)??」
「「ん?」」
テーマ; 未知の交差点
→処世術
道路脇の電信柱の陰に、
ひょろりと茎を伸ばしたコスモス。
仲間はおらず、一輪だけ。
そよ風にそよぎ、
自転車の車輪が巻き上げる風塵に揺られ、
自動車の排ガスになびく。
ピンクの花がフラフラと右へ左へ。
まるで八方美人のように。
テーマ; 一輪のコスモス