限界だった。
日々の喧騒に揉まれて、仕事もどんなにやっても終わらない。心身ともに疲れが溜まっていった。
「もう辞めてしまおうかな」
「早くどこかに逃げられたら、いいのに」
そんなことを思いながら、、。
ふとデスクに目が止まる。そこには何やら手紙らしき封筒が置かれていた。
“10年前の私へ”
どうやら、10年後の私からの手紙らしい。
封を開けると、かわいいお花柄の便箋。でも、中には何も書かれていない。
「なーんだ」
がっかりしながら封筒に戻そうとした。そのとき、
カサリ。
乾燥した四葉のクローバーが封筒から落ちる。
それだけ、たったそれだけだけど涙が零れた。
10年後
今は時代の進化で過去の自分に手紙が出せるらしい。
もうそんな時代なのか、
私も何か過去の自分に手紙でも書こうかなと花柄の便箋を手に取った。
何を書こうか、こんな辛いことがあった、素敵な出会いも、喜びもあった、あそこの飲食店はすごくおいしい。
伝えたいことが沢山ある。1週間ものすごく悩んだのに、何も書くことができなかった、、
だって、ことばが見つからない
伝えたいこと沢山ある。辛いこともそれの乗り越え方も、ささやかな幸せも。
でも、それを作ったのは過去の自分で、沢山辛いこともあったけど、どれも間違いじゃなくて。
過去の自分がいたから、今の自分がいる。
そんな今の自分が、どんなことばを送れるだろうか、、
ふと、桜が満開に咲いた土手が目に映る。
「ふっ、綺麗だなー」なんて思いながら近づくと、小さな石につまづいた。
ついてないなんて思いながらも靴元をみる、、
そこにはぶつかった小石の先に四つ葉のクローバーが咲いていた。
これだ
私は過去の自分にかけることばが見つからない。だってどれも間違いで正解なような気がするから。
だから私は送ることにした。
ささやかな幸せ、幸福のことばを
(10年後の私から届いた手紙)
すれ違い
普通だと思ってたの。ずっと、それが、当たり前になっていたんだ。傍にいてくれることが、無意識のうちに当たり前、だったんだなぁ。
ねぇ、どうして、今気づくんだろ、、。こんなに大切だったなんて。
あなたと離れてしまって、前までどうしていたのか思い出せない。あんなにいっぱい笑いあっていたはずなのに、色んな話をして、色んな所に行ったのに、思い出すのが、すれ違いだなんて。もう、戻れないの、?
風がそっと吹く。春の風だった。
「またね!」
あぁ、でも、あなたは最後にそう言った。
胸の鼓動
心臓が、どっと跳ねた。ああ、運命なんだ、。その言葉が脳裏を過ぎる。私の目の前には、ガーベラがプリントされたスカートが、ガラスの向こうですんと佇んでいる。奪われた目はいつの間にか離すことができない。時が止まったみたいだった。
私は昔から、可愛いものが好きだ。可愛い雑貨、洋服、アクセサリー。でもいつからだろう?大人になっていくにつれて、忙しくなって、そういうものを手にしてなかったな、、。そんな思いも込み上げてきて、私はそっと手を伸ばす。ちょっと高めなそのお値段に少しガッカリするけど、今度、お金を貯めて、これを着たい。
私はそっと、そんな覚悟を決めて、カバンを持ち直す。さっきまでは憂鬱とした、何も変わらない日だったはずなのに、今はとても清々しくて、気分がいい。
次の休みはあれを着てどこにいこうかな?今ならどこへだって行ける気がする。❁⃘*.゚
踊るよう
「今まで、よく頑張ったね」
たった一言、私の積み重ねた3年間は無駄じゃなかったのね。
高校最後の部活の日。今まで、多くのことを教えてくれて、普段は滅多に人を褒めない。そんな人に最後に貰えた言葉、、。すっと胸に入ってきたこの言葉に、視界が何故かぼやけてしまう。
私はきっと今日のことを忘れない。忘れなれない。心には、ほんの少しの寂しさと、嬉しさとこれからへの希望が残って、、。私は、次の曲を踊り出すかのように、沈みかかった夕日と、顔を出した星空の元へ部室のドアを開けてとびだすのだった。
※初投稿です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます!