灯火を囲んで
今日も明け方こう唱える。
春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の声
花落つること知る多少。
これは春が来て
暖かくて寝過ごしてしまったけれど、
耳をすませば小鳥の声が聞こえる。
昨夜の激しい雨音を思い出し、
あの嵐で庭の花はたくさん散っただろうと
ぼんやり思っているということだと
私は多分そう思う。
寝過ごしちゃうところも
ぼんやり思ってそうなところも
私のこの詩の好きなところ。
灯火はそんな
この詩のぼんやりしたところを
表してくれる。
煙はもくもくと
空へ昇っていく様子を見せてくれる。
この時間だけ
この詩と向き合える気がした。
"Good Midnight!"
雨が降ったら
きっと花は落ちてしまう。
それでも春は暖かくて
寝過ごしてしまうものなのです。
肌寒い風が
私を通り抜ける度、
秋が冬支度を始めていると
ずっと思っている。
紅葉は一瞬で
落ち葉は吹雪となって散る。
踏まれた紅葉の葉は
踏みにじられた
あの日の私の気持ちみたい。
なんでって言葉と
ぐるぐるした感情と
失踪したい、消えたい、
そんな考えを抱えて、
飛行機に乗るだけのゲームを開いた。
座席は1番後ろの窓側。
世界なんて知ったこっちゃないと思った。
全てを置いていきたいと思った。
ちょっと経って地図を見た時
飛行機が海を飛んでいた。
きっと窓からは海に浮かぶ雲の影が
綺麗に見えたはず。
嫌な気持ちを全て飛行機に乗せて
全部連れて行ってあげて。
海を見せて、雲を見せて、
たまに月明かりを見せて。
"Good Midnight!"
30分ほどでゲームは終わってしまった。
ただただ飛ぶだけの、
勉強用アプリみたいなものだったから。
それでも私は
どうにかして欲しかった気持ちが
全て空港に置き去りにできた気がした。
時の番人。
それは私情で時をいじることは
絶対に許されない役職。
わかっていたけど
どうしても止めたかった。
未来で君は事故に遭うから。
時計を戻して、
時を戻して、
君を救いたいと思った。
もちろん上から許可なんか出なかった。
私情丸出しだから。
でも私は知ってる。
君がいなくなったら
この後の世界はまあ大変だ。
君はひらめきが冴えていて
社会に大きく貢献することになる。
でもそのことを知るのは
やっぱり番人だけで。
上にはどうしても伝わらない。
"Good Midnight!"
でもそれは本当のことだけど
ただの建前。
君がいない世界なんか
色がなくてつまらない。
たとえ海で溺れようと
ビルから飛び降りようと
私は会いに行くよ、
時を止めて。
ふわっと香るキンモクセイ。
もう秋も終わりかけだというのに
健気に花を咲かせ
香りを風に乗せる金木犀。
モクセイとついているから
木星にも生えてそうだなーって
考えがぼやぼやしている
今日の私の頭とキンモクセイ。
花を知ることで香りを知ること。
金木犀はそれを教えてくれた。
本当は
毎日が藍色っぽくて
泣きたくなるし、
寂しいし、愛されたいし。
ちっぽけだけど大きな悩みで
1日が過ぎていく。
そんな中でも金木犀は咲き誇る。
言葉では綴りきれない、
毎日変わる彩りと香り。
あー、地球って広くて
私ってちっちゃいのに、
私より小さい金木犀は
こんなに一生懸命
キンモクセイやってるんだって思ったら
ちょっとだけ
どうでもよくなれる。
"Good Midnight!"
私の悩みは消えることを知らないだろう。
1週間も長く重いものだろう。
それでも金木犀は
今日もキンモクセイ。
大好きな言葉を背負って
さあどこへ行こう。
家でのんびりするにも
外に行くにも
真夜中はちょうど良すぎる。
寝静まり、穏やかで
目を瞑ればすーっと呼吸が安定する。
大好きな言葉を背負ったら
体はもちろん重くなるけど
前より幾分かマシ。
何のために背負ってるのかも
わからないまま
週を背負うよりかは。
"Good Midnight!"
カタカナでグッドミッドナイト。
私の大好きな
いい真夜中のための言葉。