父の足を踏んだので生姜焼きを作りました

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12/19/2025, 9:14:56 AM

こう
鍋底に焦げ付いた
肉片のように
こびりついて
はなれない

かりかり
かりかり
かりかり
かりかり

爪を立てて
こびりついたそれを
ひっかいて
はがそうと

でもそれは
どれだけかこうとも
はがれなくて

まわりの
やわらかいところに
じんわりと血がにじむ

かりかり
じゅわり
かりかり
じゅわり

これが
唯一の
心残りで

12/9/2025, 2:02:42 PM

あとすこしで
もうすこしで
とどく

でもいくら
うでをのばして
つまさきだちで
せをのばしても
あいかわらず
ふれることすら
できなくて

あとすこしで
もうすこしで

でも

ゆびさきすら
とどかなくて

わたしのては
ふるえるだけ

12/5/2025, 3:38:24 PM

いのちってのは
幾つも星をわたるわけで

いまここに
わたしが微睡んでて
あなたが隣にいる

ここがわたしの
終着点の星

その星の中はあたたかい
きっと他の星もそうだ

でもすべての星が
あたたかいってわけでも
ないんだろうが

まぁ
すくなくとも
ここら一帯の星々は

おおよそあったかい

11/21/2025, 10:32:09 AM

それは案外

触ってみれば
柔らかくて
固くて
ベトベトしてて
ジャリジャリしてて

ぽいっと口に含むと
甘くて
苦くて
辛くて
酸っぱくて

いろいろである

でもひとつだけ
触れると
舌で転がすと
すぐにこわれるのは
いっしょ

もろくて
おいしくて
まずい
それは

どれも
じぶんの一部で

11/5/2025, 8:51:39 AM

嗅覚は
記憶を呼び起こす
鍵である

そんなことが
本に書かれていた

ふーん

特に気にしなかった

季節は
暑さから
息を抜いて
落ち着き始めた

呼び起こす記憶が
あるとするなら
きみの髪

さらりとしてて
艶やかで

その香りは
秋の吐息と
同じだったな

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