タイムマシンを開発し、
たった今一人目のタイムトラベラーを送り出した
科学者ポール氏が、記者たちの質問に答えている。
そんな中、1人の記者が立ち上がり、
こうポール氏に言葉を投げかけた。
「貴方は大変なことをしでかしましたね。」
「なんです?」
「タイムマシンなんて、開発されるべきじゃなかった。」
その一言で会場の空気は少しばかり凍りついた。
「例えば、彼が誤ってあの時代の人々に
ぶつかったとしよう。
その時点で、ズレが生じる。」
「ズレ?」
「すると、本来12時00分に横断歩道を渡っていたはずが、彼にぶつかったせいで、12時01分に横断歩道を渡ることになるんだ。」
「それは大変なことです。
もし、その渡った男が1分のズレで、交通事故によって亡くなったら?」
記者は興奮した様子で更にこう続ける。
「つまり、1つの血筋が途絶え、
現代から人が消え、
存在しなかったものとして扱われるんです。」
だが誰も、まともに取り合わなかった。
「すぐにわかります。
貴方達はただ、盲目的に技術の進歩を追い求めてる
タイムマシンが、それの一例だ。」
「貴方は、悲観主義というものですな。
そしてそれに取り憑かれている。
なぜ技術の進歩を素直に喜べないのです?
人類にとって大きな一歩というのに。」
「すぐに、誰かが消えますよ。」
タイムマシンを開発し、
たった今一人目のタイムトラベラーを送り出した
科学者ブラウン氏が、記者たちの質問に答えている。
そんな中、1人の記者が立ち上がり、
こうブラウン氏に言葉を投げかけた。
海の底に、1人の少女が沈んだ。
200年前のことである。
青いドレスを身に纏い、沈んだ。
まるで不思議の国のアリスが穴の中へと
落ちていくように、ゆっくりと。
そのように、安らかならば良いのだが。
彼女の名前は知られていない
今や、彼女は魚の住処となっている。
誰も憐れまなかったが、魚たちは、
知る由もなく、住んでいる。
海が彼女を受け入れたとでも言うのだろうか。
それは彼女自身すらも、知ることはない。
君に会いたくて来た
本当の気持ちを伝えたいけど、
もっとお酒がいる
「見ての通り、日記です。
火薬臭いし、なんなら焦げてるでしょ。
もっといい品物がありますよ。」
その日記は、何年も前からガラクタ入れ同然の
木箱に入っている。
ある日古物商の男はふとそれを手に取った。
"10月6日 (水) 快晴"
晴れ渡っている。
今日で開戦から5年目
退屈。明日も書く。
そしてページを捲ると、ただの白紙である。
「思ったとおりだ。つまらない。」
閉ざされた日記は、また木箱に戻された。
木枯らしが吹き、色褪せた落ち葉が舞う。
落ち葉と共に、虫の死骸も舞っているように見えた。
「こいつらは何を成したのだろうか。」
老人は、ベンチで1人呟いた。
木枯らしが強く吹きつける。
「何を成したか。
これで私は満足だろうか?」
木枯らしが冬の訪れを告げる。
同時に、いくつかの灯火を吹き消していく
「いや、満足なのかもしれない」
「そうだ。あまり我々を待たせるな。」
いつの間にか、目の前には黒スーツの男が立っていた
「行くとしよう。」
冬が訪れる。