#100「返却期限」
山のように人の言葉を借りる
返却期限までに返せるかわからないから
今日も延長を繰り返している
他人から借りた言葉でしか
わたしは自分の感情を表せない
まるで赤ちゃん、みたいだね
あらゆる罵詈雑言を自らの頭で、表現で
振り絞って怒り狂うヒトの方が
よっぽど大人に見えてしまう
物書きに向いていない
俯瞰した物語に、結局酔ってしまっている
だからいつまでも大人になれないのだよ
借りたものを全て返すには
大人にならなきゃいけないのに
今日もわたしは、ワガママなわたしのためだけに
他人の言葉の羅列を読み取った
「ピッ」
「誕生日おめでとう」
いつか世界が終わるとしても
目を星のように輝かせ、拙いプレゼントを
喜んでくれたあなたを思い出すでしょう。
いつか世界が終わるとしても
誇らしげに手渡してくれた折り紙を走馬灯に
あなたがいる明日を願うでしょう。
いつかあなたが誕生日を呪ってしまう日がきたら
わたしと一緒にあなたの奇跡を祝おう。
出会ってくれて、ありがとう
この世に生まれてきてくれて、ありがとう
どうか幸せをくれたあなたが
一番幸せでありますように。
#99「ここにある」
もう何年もかいていない
ワタシを形作るなにかを、産み出せなくなった
岐路に立たされている
どこに行けばいいかなんて分からない
大人になっていく、サナギの自分を恥じなくては
悩む暇もなく、これから厳しい季節がくる
そして容赦なく花は咲く
そこに舞うキミの姿を想像して少し、悔しい
もう何年もかいていない
胸のうちに残した、ぐらりと光る黒曜石
あの頃の輝きはヒンヤリと冷めてしまったけれど
手のひらに感じるギラギラとした熱情
ワタシの気のせい、なのだろうか
#98「見知らぬ街」
ここにはいられなかった
神々の奇跡をAIだと刷り込まれた世界は
カプセルの中で死を待つのみだ
だれも自分を信じられないんだな、と思う
もし最後の審判がきたとしても
人類は笑いながらカメラを向けるのだろうか
「こんなの、現実じゃない」って
ふと、墓場はここで良いのだろうかと
警鐘がボクの頭を揺り起こした
未知との邂逅への高揚に
足は自然とスニーカーを履いていた
死よりも想像のつかぬ未知の星
天国への経由地にはちょうど良いだろう
ボクは、船に乗った
もう助からない遠くで嘲笑う人々を
弔うように見送って
そうして案外、ボクの世界が狭いことを知る
死地に向かうカメラマンの気分だったが
旅人は思ってもいない歓迎を受けた
故郷の地球とは似たようなものばかりでも
未知は好奇心のスパイスとなる
目に映る全てが、艶やかに光って
手に触れれば暖かかった
この星で感じた唯一のかなしみは
幸せという感情だけが、地球がまだ明るかった頃と
なんら変わらないという事実だ
けれど、帰りたいとは思わなかった
それは見つけてしまったから
ボクの内に奇跡があることを
それは、もっと先へと羅針を動かした
知ることを怖れなかったボクは
宇宙人の一員となった
未知は、この世で最強の魔法で
まるで禁断の果実のよう
恐れるのも仕方がないよな
でも、その先が楽園だったことを誰が知ろうか
足跡を残した未知の星
ボクはそこで、自らの奇跡を再出発させたのだ
#97「遠雷」
雰囲気変えた?
青い蛍光色リングに照らされた
イエローベースの君
やっとのことで蝉の声
ギリギリ気分の夏休み
雑踏の中から連れ出して
淡い桃色の入道雲のなか
マイクロファイバーみたいな光を横目に
遠くの雷鳴が糸を引いて小さくなっていく