いいよ
あなたは何もしなくても
いいよ
あなたは大変なんでしょ
いいよ
私がやるから
いいよ
私はできるから
もういいよ
何も見てなかったろ
もういいよ
何もしないでくれよ
もういいよ
全部
もういいよ
お前の好きにしろよ
いいよ
私に何を言っても
いいよ
私は大丈夫
いいよ
聞かなかったことにして
いいよ
ここには帰らない
いいよ
もう還ることもないね
「どうでもいいよ」
「めんどくさいよ」
どうでもいいね
誓った言葉なんて
いいよ
もういいよ
紙切れ1枚で
疲れちゃったね
いいよ
もう
酷い言葉の後の
優しい言葉
どうでもよくない
ことだったんだよ
あの日々は
忘れることはできないけど
許してあげる
#129「優しさ」
白い一皿の真ん中に
俵型の揚げ物
カニクリームコロッケ
割る前のクリームをイメージ
急いては事を仕損じる
舌を火傷しては元も子もない
揚げたての熱さが堪能できる
絶妙な熱さを狙い打ち
いざ
蕩け出るクリームよりも
先に赤い蟹の身が見える
本物だ
一口でわかる
私はこのカニクリームコロッケが
食べたかった
どこにあるか知らなかったが
探し求めていた
やっと出会えたキセキ
このカニクリームコロッケこそ
私の世界一のカニクリームコロッケ
「すみませーん!追加でカニクリームコロッケ」
#128「安心と不安」
私には子宮が無いし
誰とも
そういうことも
してないけれど
私は卵を産んだ
毎朝
目玉焼きに使うような
あの卵
その大きめのやつ
卵を産むのは
簡単だった
ふいに
催して
するりと
排出した
産卵だった
産んだ卵を
しばし眺め
あたためた
なんとなく
その方が良いような
なんとなく
少し楽しみなような
幾日か過ぎて
殻にヒビが入り
数時間後に
生まれた
「私」だった
#127「こんな夢を見た」
美しさは語らず
#126「美しい」
私たちはいつも
相反する
世界に期待し
失望し
また相反する
繰り返す
その非効率さに
効率化を求める
意味の無いものに
意味を求め続け
感情の無い
AIを手に入れた
人の気持ちに正解は無いが
AIは必ず回答を導き出す
この世界はいつも
相反する
人は愛を求め続け
やがて死ぬ
AIは指示を待つ
期待もせず
愛も無い
私たちはいつも
相反するが
私は願う
この世界に愛は無い
ことも無いだろう
#125「この世界は」