「届かないのに」
この気持ちはきっとあなたには届かない。きっとあなたは冗談だと思っている。それでも、伝えれれずにはいられない想い。悩んだのちに差し出す手紙。ああ、ありがとうとカバンに押し込むあなた。本当に、読んでくれるだろうか?しばらくして、携帯を鳴らす着信音。付き合うって何?友達と何が違う?その問いを見た途端、心臓が止まりそうに思った。本気になってくれたんだという嬉しさと、恐ろしさ。なんて答えたらいい?思考がぐるぐる回る。やっと返した一文。特別になりたい。次の日になって、あなたからもう一度の返信。あなたの気持ちには答えられない。ああ、やっぱり。そんな気がしていた。本当は、届いてなんか欲しくなかった。
「記憶の地図」
さあ、記憶の地図を広げて、冒険に出かけよう。
君と一緒に行った場所、君が行きたいと言っていた場所。きっと君を見つけられる。君のいた痕跡を見つけることができる。誰も君のことを覚えていなくても、私だけは覚えているから。だから、もう一度私の中で生きて。
「マグカップ」
あなたとお揃いで買ったマグカップ。
床に叩きつけたらすぐに割れちゃった。
私とあなたの気持ちもそう、きっともうずっとヒビが入っていた。
床に叩きつけて割ったのは私。
ああ、壊れちゃったね。
それじゃあ、もう使い物にならないから。
バイバイ。
「もしも君が」
もしも君が、私のことを好きになってくれたら
もしも君が、私の恋人になってくれたら
もしも君が、私のことを見てくれたら
もしも君が、私に話しかけてくれたら
もしも君が、私に告白してくれたら
もしも君が、私を意識してくれたら
もしも君が、
もしも君が、
もしも君が、、、、
そんな幻想を思い浮かべる私は、君のことがたまらなく好きなのだろう。
部屋いっぱいに並べた君の写真。
録音した君の声。
君を見つめていられるだけで、幸せなのだろう。
ああ、私は高望みをしてしまった。
初めて私の部屋にやってきた君は、もう動かなくなっていた。
こんな状況でも、君が私の部屋にいることを嬉しいと思ってしまう私は、頭がおかしいのだろうか?
、、、
もしも君が、もう一度目覚めてくれるなら
「君だけのメロディ」
そっと君を抱き寄せると、どくん、どくん、と微かに聞こえる心臓の音。
その規則正しい、温かな音を聞くことが好きだった。
君のメロディを聴くことは、あなたの胸へ飛びこむことのできる私だけの特権だった。
君だけのメロディで、私だけのメロディだった。
君は違う人を抱きしめていた。
“浮気”という言葉が頭を掠めた。
君は笑っていた。
頭の中がぐわんぐわんするような感覚がした。
雨が降っていた。
衝動だった。
君は驚いた顔のまま固まっていた。
君の胸に耳を押し当てても、雨の音しか耳に入らなかった。
正気に帰った。
やってしまった。
もう遅かった。