私は物語が大好きだった
憧れの最後を見届ける少女の物語や
戦うことを決意した青年の物語など
どれもどうしようもなく悲しいけれど
それでも希望を抱き前を向く
彼らの人生の一欠片に何度も心を打たれた
私も彼らのように、強く在れたら
ずっと、そんな思いを抱いてきたけれど
もし私の人生がひとつの物語なら
きっとタイトルすらないのだろう
言い訳ばかりで、全てから逃げ出した少女は
暗く深い絶望に
真っ逆さまに落ちてしまう
そんな結末が相応しいのだ
今日でこの想いに終止符を打つの
貴方だけを想っていたけれど
なんだかもう、疲れてしまった
なんと言われてもいい
私の想いを酷く拒絶しても
私はもういかなくてはならないのだから
ああでも、ひとつだけ
さよならは言わないで
叶わないとわかっていても
きっとまたいつかと願うだけで
どんな悲しみにも耐えられる気がするの
昔、大空を司る天の女神は
貴く輝く光に影を落とし
清く純心たる闇に灯火を射した
二つの世界は崩壊した
一欠片の秘宝だけを遺して
女神の大罪によって、世界は色を失った
だが、今も何処かに存在しているらしい
二つの秘宝が入り混じり、交互に訪れる
光と闇の狭間の世界が
貴女はすぐ側にいるのに
手を伸ばせば触れられるのに
まるで見えない壁があるように
貴女を振り向かせることができない
まるで心臓が掴まれているようだ
私と貴女の間に
こんなにも距離があるなんて
貴女に触れることができないなんて
もう随分と長い間
貴女を想って生きてきた
いつかこうなることはわかっていた
だって貴女は人間で
私は悠久の時を生きる種族で
貴女は私の人生のほんのひと時しか
この世界に存在していなかった
それでも私の心には
貴女の存在は大きすぎたよ
ずっと貴女の言葉に縋って生きているんだ
それが嘘だとわかっているのに
約束など果たせないとわかっているのに
貴女の声を、姿を、優しさを忘れても
最期の記憶だけは失くさないように
「泣かないで、大丈夫。きっとまたいつか」
と繰り返して