「揺れる羽根」
彼女は今、柔らかな朝陽を背に窓辺に立っている。白く美しい翼を広げてこの部屋を出て行こうとしていた。
「待って!」
引き止めようと駆け寄り、必死に叫ぶ。まだ離れたくない。もう少しだけ。もう少しだけ、傍に。
「もう少し、一緒にいてくれないか?」
彼女はゆるゆると首を左右に振った。
「じゃ、じゃあ、次はいつ会える?きっとまた会えるよな?」
縋るように尋ねても、やはり彼女は首を横に振った。
「分からない。また会える保証は、ないの。」
鈴のように透き通った声が、哀しげに告げる。
「でも。」
全身の力が抜け、その場にへたり込む俺を、駄々をこねる子どもを見るように困ったような憐れむような表情で見下ろし、彼女は言った。
「でも、もしかしたら会えるかもしれない。私はまた、ここに来たいと思ってるもの。」
その言葉に顔をあげると、一枚の白い羽根を差し出してきた。
「これって…」
「これは、今私が翼から抜き取った羽根。これを窓辺に飾っておいて。そうしたらあなたの居場所がわかるから。きっと、会いにくる。」
そう告げて彼女は飛び立って行った。
窓辺では暖かな陽射しを浴びて今日も白い羽根が揺れている。
だからきっとまた、会えるだろう。
「無人島に行くならば」
無人島に行くなら、やっぱり1人は寂しいな。
あなたと2人で島を回ってテントを立てて、笑って話をしていたいもの。
「秋風」
カシオペアの方角から流れてくる風は、生温かさの中に少しだけひんやりとした匂いを含んでいる。
やがてこの風は氷のように冷たくなり人々の心までも凍らせてしまうのだろう。
だから秋よ。もう少しだけ、この風を届けてほしい。
「予感」
こうなる予感はしていた。
あなたの声が、態度が、もう昔とは違ってしまっていたから。
それでもこの予感が外れるように私なりにできることを精一杯やったつもりだった。
今、去っていくあなたの背中を見ている私は、一体なんなのだろう。
頑張っても遅かったということ?
それとも、あの予感に引っ張られてしまったせいなのかな?
あなたが私をどう思っていても、私にとってあなたは友達