紅の記憶
思いつくまで……
吹き抜ける風
思いつくまで……
友達4人と念願のキャンプに来た。
自分含め全員がアウトドア好きだったため、学生のころからよく、いつかみんなでキャンプに行きたいと話していたのだ。
買いものをしながらキャンプ場へ向かい、テントを立て、バーベキューの準備。昔からのアウトドア好きなだけあって、準備は滞りなく進んでゆく。
準備が終わり次第、昼食の時間だ。
各々持ってきた食材を、焼いてシェアして食べる。
少し焦げていた方がうまいと言い、炭を作る友。
たこ焼き器などないのに、生地とタコを持ってきた友。
間違ってうちわを燃やしてしまう友。
そのへんの草や小枝を食べようとする友。
自分の友達には、変わったやつしかいない。
そいつらに呆れつつも、この状況を楽しんでいた。
楽しい時間はすぐに過ぎる。
いつの間にか日は沈んでいた。しかし、まだまだ遊び足りない。シャワーを浴びたあとは、テントでトランプを始めた。
ババ抜き、大富豪、ブラックジャック。
何戦も勝ち、そして負け、それ以上に笑った。
そうして遊び続けていると、眠気が襲ってきた。
スマホを見ると10時。思っていたより早い。まだ起きていてもいいが、眠いのは他4人も同じのようだ。
ランタンの明かりはそのままにし、寝袋の用意をした。
おやすみ、と一言かけて目を閉じた。
が、目が冴えてきた。寝ようとすると眠たくなくなるこの現象は何なのか。少し散歩でもしようと起き上がると、1人と目が合った。どうやらそいつも眠れないらしい。ランタンを持ち、2人で散歩することにした。
しばらく歩いていると突然、ありがとうと聞こえた。
隣を歩く友人は、こちらを穏やかな目で見ている。
キャンプに誘ってくれたこと、
高校生の頃友達になってくれたこと、
今も友達でいてくれること。
それらに対する感謝の言葉だそうだ。
嬉しい、が。自分はこういう雰囲気は苦手だ。
なに当たり前のことに感謝してるんだ、と自分でもわけのわからないことを言って話を終わりにした。
その後は、出会うまでのお互いの昔話や、高校生の頃の話、眠っている3人の話など、ランタンを囲みながら夜明けまで続けた。
『記憶のランタン』
最近、落ち葉が多い。
紅葉を撮りに行きたいと思っていたら、もう散り始めてしまっていた。
大きく隙間の空いた枝の間からは、青空がよく見える。
季節は、冬へ進もうとしている。
写真を撮る予定を早めに立てなければ。
カレンダーを思い浮かべながら、早歩きで帰った。
『冬へ』
窓の外にあるものを、やけに熱心に見つめている。
そういえば、今日は月が綺麗に見える日だったか。
朝のニュースを思い出しながら、声をかけた。
「あれから一年なんだねー」
声ではなく、ふさふさの尻尾で返事をされる。
相変わらず冷たい対応で笑ってしまう。
ふと、一年前拾った段ボール箱を見る。
拾ったときに中に入っていたのは、雑巾のようなタオルと、拾ってくださいのメモ、そして君。
たったそれだけだった。
月明かりに照らされながら、必死に助けを求める君の姿が、今も忘れられない。
「生きててくれてありがとねぇ」
独り言に振り向いた君は、今までで一番美しく見えた。
『君を照らす月』