〈言い出せなかった「」〉【途中】
今日1日だけでも言い出せなかった言葉が沢山ある。
このタイミングで「ありがとう」を言えばよかった。「すみません」を言い忘れたことに相手が去ってから気がついた。もっと上手に相槌を打てたのに。
どうして私はこんなにコミュニケーションが下手なんだろう?
小学生の時にはもっと明るくて、楽しく話せていたのに。
参考にできればと、クラスの明るい人たちをよく見てみた。誰にでも明るく挨拶してくれる人。休んでいた時のプリントを進んで見せてくれる人。何か失敗した時にはきちんと謝る、それも私のような陰気な謝罪ではない。
〈夏の忘れ物を探しに〉
後で書きます
〈もう一歩だけ、〉
夏休み終了早々、今日はテストがあった。私達の学校で恐れられている、二次試験レベルの難解なテストだ。百点満点中、平均点は約三十点。だから、半ば諦めて、昨日は英語の暗記ばかりしていた。それでも半分ぐらいは解く事ができた。一問五点だから、平均点ぐらいはできただろう。だから、チャイムが鳴っても焦らなかった。
放課後、配布された解答を見て頭が真っ白になった。見覚えのある数字が無いのだ。慎重に見て、一致したのは二問のみ。つまり十点。それ以外は見事に間違っていた。部分点すら期待できないだろう。
悩み事は笑い話にすると忘れられると聞いた事があるので、友人達に話してみることにした。やはり皆難しかったと言っており、少し安心した。私も感想を言おうとした時、クラスメイト達の声が聞こえて来た。「やばい、三十点無いかも」
「良かった、二十点はあった」
私は数学が苦手だ。それは認めていた。でも、それでもまだクラスでは出来る方だと思っていた。もう何も話したく無くなってこっそりと教室を出た。
今回のテストは夏休み明けテスト。勉強時間はたっぷりとあったはずだ。なのに私はまだあるから、とスマホをいじり、漫画を読み、ダラダラと暮らして来た。今回のテスト結果は当然だ。あの時、ほんの少しでも苦手教科に取り組んでいたら。あと一歩だけでも進んでいれば。
明日もまたテストがある。得意でも苦手でも無い古文だ。今またこうやって現実逃避として悩みを作文化している私だが、そろそろ前を向いて、あと一歩だけでも進んでみよう。明日の自分の為、数年後の入試のため、大人になって働くようになった時の、未来の自分の為に。
〈見知らぬ街〉
〈素足のままで〉【途中】
自分の部屋に入ると、見慣れた絵がいつもと違って見えた。祖父が描いたミステリアスな壮大な城とどこかにありそうで無い、美しい街の絵だ。ファンタジーファンである私はこの絵が大好きだ。だから、一目で異変に気づけた。いつもと鳥の位置が変わってる。空がいつもより少し暗い。そして窓から見た景色のように絵の具の跡が見えなかった。そっと絵に触れてみると手が中に入った。信じられない。指先に冷たい風が触れた。もしかして、「ナルニア国物語」や「鏡の国のアリス」みたいに中に入れたりするのかな?私は勇気を出して絵の中をくぐった。
目を開けると
〈遠雷〉
つい先程まで明るかったはずの空はいつの間にか暗くなっていた。時間が経つ速さに驚き、時計を見てみるとまだ午後2時だった。少し安心して電気を付け、また勉強机に向き合った時、ゴロゴロという音が聞こえて来た。久しぶりに聞く雷の音。カーテン越しに空が不気味に光るのを感じる。家に居るので大丈夫だとは思うが、本能からか不安を感じた。気持ちを紛らわせる為に光ってから音が届くまでの時間を数える。10秒、30秒、8秒、そして2秒。かなり近い。より不安が大きくなった。こんな事なら問題集のA君みたいなことやらなきゃ良かった。物理を選択するつもりもないから、音速の問題なんてもう解くことなんて無いだろうに。雷はまだ鳴っている。雨の音も激しくなる。毎年水不足気味のこの土地でこんなに激しく雷が鳴るなんて誰かが菅原道真を怒らせたのだろうか。
スマートフォンがピカッと光った。一瞬雷かと思ったが、フラッシュ通知をオンにしていたことを思い出した。ここ数ヶ月ほど会えていない、中学時代の友達からだった。「雷やばいね」その一言で、何だか温かい気持ちになった。「そうだね。怖いね」と返信する。でも、不思議ともう恐怖は消えていた。スマートフォン越しではあるが、人の温かさを感じて勇気づけられたような気がしたから。