『イブの夜』
あなたにとって幸せな日になりますように
きっと、キリスト様もそれを望んでいます。
『大空』
広いこの大空はどこまでも繋がっていて、
この空の下、人は争い、騙し合い、嘘をつき、歌を歌い、踊り、そして、笑い、泣く。
鳥は羽を羽ばたかせ、虫は光へ向かう。
隣のあの子も、今この瞬間命を落とさんとする人も、今目を開いたばかりの赤子もみんな、同じ、この大空を見上げている。
『寂しさ』
僕の中には何も無くて、空っぽで、そしてお母さんがくれた宝物。これの中身は見たらダメだよ、と渡された、綺麗な箱。
開けたくて、開けたくて、でも、開けるのが怖くて
でも、僕は、見てしまった。
箱には、何も無くて、僕と同じで、空っぽだった。
悲しくて、大好きなお母さんに騙されたと思って、僕はずっと泣いていた。
でも、何となく、僕の心は軽くなった。
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寂しいって気持ちは、どこか懐かしい、とか、そういう温かいものがあってこそなるものだと思うのです。 by E
『冬は一緒に』
寒い冬の日の朝だった。
まだ陽は眠りについており、辺りは薄暗かった。
つんと肌を割くような冷たさは幾年経っても慣れない。
降る雪を見ているとどこか虚しいこの感情はなんなのだろう。
キャンバスの白紙のような真っ白さは、なんだかいたたまれなくさせ、私の心を締め付ける。
小さな芽も起きる気配が全くなく、寒さのせいか、その場にうずくまり、身震いした。
『おねぇちゃん、雪!雪だよ!!』
かつていた、小さな手のあの子は私の元を離れ、今や花になっている。
私に春が来ることは二度となくて、あの子が冬に戻ってくる事も二度となくて
冬は一緒に、私と詩を嘆く
『とりとめもない話』
「ねー、あのさ、聞いてるー?」
その人は手に持っていたネイルキットを横目にじとりと俺の顔を見た。
はぁ、とため息を付くとネイルキットを下ろし、机に顎を乗せ、上目遣いで俺を見ていた。
「あんたさー、早く学校、来てよ、
あんたいないと授業つまんないんだけど」
そんなわけない。
こいつには沢山の友達がいて、先生にも慕われて、つまらないなんてことはないだろう
横に置いてあるフルーツの山のひとつを手に取ると、彼女は手馴れた手つきで皮をむいた。
「……今度、マック行こって、言ってたじゃん、もう、期間限定の、終わっちゃったし……嘘つき……早く目を覚ませよ、このバカ」
無機質な電子音と酸素を運ぶ音だけが、彼女の耳に届いていた。