♯雪の静寂
ある朝突然訪れたのは、待ちに待った雪の静寂。
「僕も寒いのは嫌いだけど、雪は大好きなんだ。
雪が降ったら写真を送ってね」
と言ったあなたとの約束の日。
私は1人で楽しく雪だるまを作る。
私の地元は雪が積もらないから
こんなに大きな雪だるまを作ったのは初めて。
そして写真を撮ってあなたに送ったの。
「私アートの才能がないから、
全然可愛くない雪だるまができちゃった」って。
そしたらあなたは「可愛いね」と言ってくれた。
雪だるまを作ったあなたが可愛いとのこと。
ついでに雪だるまも可愛いよと褒めてもらった。
前日は大人なフリをして、
愛についての質問に答えていたのに、
翌日には、あなたに見てもらいたくて
雪だるまを作ってるなんて、私ってアホなのかしら。
あなたはいつも私の不安を察知して、
「心配しないで」って言ってくれるし、
本当にどっちが年上なのかわからないね。
♯星になる
「あなたは可愛い♡」
と言われたら
とっても嬉しくて
胸がいっぱいになるのに
なぜだか同時に胸が痛い
この儚い幸せを噛みしめながらも
いつかあなたが興味を失う日を
私は恐れているんだ
この恋が
夜空に瞬く星になって
その光を失う日は
いつなのだろう
その日が来るまで
この幸せと不安を
どう扱ったらいいのか
私にはわからない
♯遠い鐘の音
今日はあなたから元彼女との物語を聞いた。
学生の時から6年間付き合っていたり、
遠距離をしていたり、
私と夫の関係とすごく似ている。
生まれ育った国も文化も全てが違うけれど、
あなたに惹かれるのは、どこか夫と似てるからなんだろうなと、はっと気づいた。
彼女と別れたあなたは今は少し悲しいかもしれない。
でも、大丈夫だよ。
あなたは本当に素敵な人だから。
私の少ない語彙では上手く表現できないけれど、
私が今まで出会った男性の中でも、
ダントツで素敵な人だから。
きっとまた、あなたの国の言葉で
”I love you”と言える人に出会えるよ。
遠い鐘の音が響きわたる異国にいるあなたへ、
愛を込めて。
♯夜空を越えて
「日本ではアイラブユーを『月が綺麗ですね』
と言うの?」
突然あなたから質問が来た。
一体どこで知ったの?と聞くと、
友達から聞いたとのこと。
古い表現だね、と背景を説明してあげた。
日本では間接的に想いを伝えることが美しいと
されてきたんだよ、
もちろん人によって異なるけどね、と。
「難しいけどたぶんわかった」と、
あなたから夜空を越えてメッセージが届いた。
「ツキガキレイデスネ」
この表現、私はすごく好きで、
いつか言われてみたいなと思っていたけれど。
まさか日本人じゃなくて、
外国の友達から言ってもらえるとは
想像すらしていなかった。
本当に意味わかって言ってるのかな、
きっと言ってみたかっただけなんだろうな、
それでもドキドキが止まらなくて困ります。
♯きらめく街並み
去年の今頃は毎晩イルミネーションできらめく街並み
を通り抜けながら帰宅していたなと思い出した。
絶望の中で、でもこれ以上どうしようもなくて、
ただひたすら仕事に没頭するしかなくて。
でも帰り道だけは少しウキウキしながら、
暖かく光るイルミネーションを眺めながら歩いてた。
その光は、大丈夫、大丈夫と
語りかけてくれていたように思う。
今年はあの街に帰ることはできないけれど、
代わりに、別世界の冬の街を訪れるんだ。
「美しい街だから、あなたはきっと大好きになるよ」
という言葉を信じて。