早朝の5時半
目が冴えてもう寝付けない彼女と
隣にいるのは、
彼女の本をめくるページの音で目覚めた彼氏である
連休中の2人
起こした?まだ寝てていいよ
⋯眠れないの?
たまには早起きもいいかと
眠気を寝室に残して起き上がってみる
部屋着の上にダウンを羽織り始めたくらいで
若干布団が恋しくなって後悔の文字が浮かぶ
2秒後には彼女が開けた扉から冷たい空気がお出迎え
身体の温もりと裏腹に鼻の奥がツンとした
低血圧の頭もようやく朝だと認識した模様
靴を履いて外に出た
冷えるね、息が真っ白。
あぁ僕たちの二酸化炭素
ふっ。寝ぼけてる?
白い吐息
外向モード
内向モード
素でもないし楽でもないし
ただ偽ってるだけだけど
どっちも自分だから、
というかどっちも自分になっちゃったから、
スイッチ押して切り替えて生きてるつもりだけど
とんだバショで内向的思考が役に立ち
とんだモノが外向的意欲を掻き立てる
そんな瞬間に遭遇するせいで、
ギャップとか、理想とか、
言葉の綾で自分を設定する時間は要らないのかも。と
焦って隠す必要はないのかも。と脳みそが言っています
なんとなく境界を曖昧にして生きてみても
いいのかもしれません。
心の境界線
窓から見える紳士が
そっと胸を締め付ける。
彼が来ると聞いて心が高鳴ったこと、
心の彼への想いの大きさに驚いた。
叔母様には内緒にしたいけれど
そわそわする自分を上手く隠せない。
小麦の香りの焼き菓子
澄んだ色の紅茶
彼も同じ気持ちであってほしいなんて望みながら
庭園で摘んだ花を飾る
何度も整えた髪をもう一度確認すれば
扉がコンコンと音を出す
おもてなし
君は光なのか霧なのか
声は届くのに返る声はない
手はそこにあるのに触れられない
存在するはずの天使が
記憶にしか形が残らないのは
夢を見させたいからなのか
はたまた希望を覗かせているのか
絵画に潜む神の使い
未だ人を誘うもの
光なのか霧なのか
揺らぐ羽を眺めてみても
やはり何も分からない
光と霧の狭間で
伝票に書かれた祖母の字
一人暮らしには余るほどに
段ボールに敷き詰められた梨
今年も一番好きな季節がやってきた。
祖母というのは一度聞いた好物は一生モノで
まるで永遠かのように
何度も何度も買うそうで、
電話越しにだめになっちゃうからと伝えても
変わらない相槌が耳を埋める。
梨に溺れる日々が始まる予感。
お皿いっぱいに切った梨。
白く透き通る果実に
祖母の手を思い出すほどには
昔から食べているみたい。
昔が恋しいわけではないけれど、
思い出が切ないわけではないけれど、
始めて好きだと話したあの日が
昨日かのような祖母の言葉が、
いつしかなくなるこの温度が、
今日はいつもより感じて涙が溜まる
梨