自身のために尽くした緑葉たちは枯葉となり、色良し、舞い良し、音良しと、最後は他に尽くす。
目覚めると昨日の朝だった。
6時59分に目覚め、目覚まし時計が鳴る前に止めようと手を伸ばすが落としてしまい、鳴ってしまうという小さな不快で始まる。そんなのいつもと同じだけど、日付は昨日のままだった。
ん?
確かに昨日だ。窓からさす光の感じ、感じる空気感、着ているもの、布団のよれ具合、みんな同じだ。
そして一日が始まり昨日をなぞって一日が終わってしまった。
全く昨日と同じだった。いやもう昨日じゃなくて今日だ。
次の日、それは次の今日、やっぱり一昨日の朝だった。
タイムループ……。
昨今、物語の定番設定のひとつだけどそれが現実に起きている。現実というより映画、アニメ、小説、俺はエンタメの中にいるのか?
なんとかしなくては「今日」だけで歳をとり死んでしまう……。
そこで今日からの脱出を試みる。
まず目的は明日に行くことだ。
寝ない。寝ないで明日に行く。
コーヒーなど用意して、まあ、そこまでしなくても夜更かしすれば明日に行けるので試してみる。明日になったのを確認して布団に入った。
目覚めると、ああダメだった。同じ日だ……。
「今日にさよなら」、続きは検討中。
お気に入りの街のお気に入りのコーヒーショップ、お気に入りの角のテーブルでお気に入りのノートを開きお気に入りの万年筆のキャップを開ける。
カチッ。
しかし、お気に入りの言葉が浮かんでこない。
お気に入りのブレンドを飲んでいる。
誰よりも塩。
中学の頃からか、毎年、10年後の自分から手紙が届くようになった。中身は他愛のないメッセージで、青い鳥の話とか、灯台下暗しとか、なんだかよくわからない内容が続いた。これ未来の俺が書いたのか? どうせなら試験の答とか、宝くじの番号とか(知っても買えないけど)、競馬の大穴とか? これも学生は買えないか。何か役立つ情報をくれれば良いのに、未来の俺は気が利かないんだな。いやいや、そんなSFだかオカルトみたいなことが起こるわけがない。誰かのイタズラ、それも手の込んだ、ちょっと偏執的な、目的のわからない不気味なイタズラ……。それでも悪い内容ではないので、毎年届く手紙で少しはポジティブな気持ちにさせてもらっていた。
その後、卒業し、就職し、結婚した。そして未来からの手紙が届かなくなった。なんだかよくわからない手紙とはいえ、10年後の自分から届かないということは……、10年後に自分はもう死んでいるのではないか? いやこれイタズラの手紙だよね? それでも気になると気になってしまい毎年あと9年、あと8年と時々思い出しては不安になる。ただ、ちょうど子供ができて忙しい日々が続いてそれどころじゃなかった。
子どもも大きくなり手がかからなくなってきた頃、久しぶりに、10年後の自分から手紙が届いた。やれやれ一安心。
「いつもありがとう。変な手紙でごめんね、でも気づかないんだね、だって10年後の自分から届いた手紙を、10年後の自分は書いてないでしょう? ふふふ」
それは幼馴染の妻から届いた答え合わせの手紙だった。