冬支度はあるけど春支度は無い。秋支度も無い。夏支度は単語としてはあるけどあまり聞かない気がする。
冬は炬燵とかストーブとか、実際に物が多いからだろうか。確かに冬物衣料や布団は嵩張るし、重いし、支度だけで疲れてしまう。
歳を取るとそれがますます感じられてしまって、だんだん億劫になってくる。
早く全館空調の家が安く手に入るようになればいいのに。
END
「冬支度」
いま時間を止めたら無限に寝てしまいそうだから駄目(笑)。こんな事しか浮かばない状態です。
END
「時を止めて」
どーしてもあの匂いが好きになれなかった。
甘ったるい、わざとらしい、そんな印象。
花は控えめで可愛らしいのに、やたら強烈な匂い。
そういえば、〝香り〟と〝匂い〟で印象が違う気がするのはどうしてだろう??
END
「キンモクセイ」
願うだけではどうにもならない。
本当に望むなら言葉にしなければ伝わらない。
空気を読む、なんてもう流行らない。
聞き分けのいい優等生でいる必要なんて、もう無い。
まだ長い煙草を灰皿に押し付けて、残っていた水割りを飲み干す。
カランと音を立てて氷が溶けた。
「君もこんなトコで管巻いてるヒマがあるなら行きな」
シッシッと追いやるように手を振ると、ソイツは突然ガタンとテーブルに手をついて立ち上がった。
「僕がいたい場所はここです!」
虚をつかれた。
呆然としていると、飲みかけのハイボールを掴んで一気にあおる。
「だから、その、·····好きです!!」
叫んだその顔が、真剣そのもので。
「順番が逆だろ、ガキ」
デコピン一発かましてやった。
END
「行かないで、と願ったのに」
あーあ、見つかっちゃった。
カンがいいのも考えものだねぇ。
綺麗でしょ? これ。
これは眼球。
これは指。
これは髪。
これは爪。
これは耳。
これは舌。
見た事あるのもあるんじゃない?
アレ? なんでそんな離れるの。お店に並んでるのと大差ないでしょう。ただ、それが〇〇かどうかってだけで。これに驚いてちゃ駄目だよ。
ほら、こっち見て。
これは嫉妬。町外れの教会のシスターが同室の子に恋人を取られた時の目。
これは怒り。子供好きで知られたお菓子屋のオジサンが子供を殴った日に食い縛った歯。
これは悲しみ。名の知れた剣道の師範が妻を強盗に殺された時の涙。
これは暴食。慎みをモットーとした教誨師が居酒屋で金踏み倒すほど食べた時の歯。
もう分かったね。あとの三つは怠惰、傲慢、色欲。私はこれらを綺麗なボトルに入れてコレクションしてる。清廉潔白な人の大罪ほど綺麗なものは無い。
見てしまったからには手伝って貰おうかな。
そろそろ引っ越すつもりだったから。
誤魔化したって駄目だよ。
君もワタシの〝同類〟だよねぇ?
END
「秘密の標本」