しるべにねがうは

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11/2/2024, 1:25:17 AM

永遠に

「とある宗教じゃ永遠の愛を誓うらしいやん」

そんなものは存在しない、と吐き捨てる。
幻想だ。空想だ。ありえない。大体のやつが誓っておいて別れるし。随分短い永遠だ。
湿気でうねる髪が鬱陶しい。

「随分ご機嫌斜めですわね……クッキー食べます?」
「あんたがいると電子機器が狂うんよ、どっかいけや」
「残念ながら尾上君が此処にいるといって聞かないもので」
「そりゃ現代日本人がゲームテレビパソコン無しジャンクフードも菓子も無しの生活いきなり強いられりゃそうなるわ!!」

蛸嶋家は外見こそ日本家屋だが、家の中はかなり魔改造というか現代的や。近未来化してるといってもええやろう。
所狭しとコードが走り、空調完備。パソコンのために。
ついでにドリンクバーと片手で食えるカロリーバーと糖分補給の菓子とカップ麺やレトルト食品なんかが死ぬほどある。
災害に見舞われようが3年ほど生きられる程度の備蓄がある。
点検も欠かさない。Wi-Fi完備。

対して柳谷邸。蛸嶋邸と同じく古き良き日本家屋。
内装も日本家屋。エアコン無し。ストーブはある。
こたつもある。キッチン周りが最近すこし使いやすくなった。
テレビがない。スマホは辛うじてある。何代前かは知らん。
その程度である。石蕗はんも笹本はんもレトルト食品に対してあまりええ顔せえへんから柳谷柳子もあまり買わへん望まへん。
おやつは和菓子である。お茶とよく合う。
圏外。

結論。現代日本男児にはちょっと、いやかなり、たりひん。娯楽が。ジャンクが。雑味が。
蛸嶋邸が理想的すぎたとも言う。

「尾上君の行動を制限する権限は私にはありませんわ」
「悪いこと言わへんからテレビ買ったれ、ゲームとかさ…」
「石蕗に聞いてみないとなんとも……」
「やからて此処に居座るな」
「Wi-Fiもよくわかりません」
「お前本当に現代人か…?」
「あと20分程度で気が済むと思うので…」
「此処はキッズお遊びスペースやあらへんぞ」

てっきり尾上だけやと思っとった。この家に来るのは。
普段の生活の話を聞いて出てきた『これ現代人には辛いだろ』の羅列で憐れんだらそうなっとった。ええわうち遊びにこい、から〇〇日みに行っていいすか…みたいなLINEがきて、都合がつく日は漫画を読んだりしとる。あいつ漫画読むの初めてっつって本棚に食いつく勢いやった。そういや柳谷邸にも漫画の類はない。両方厳しい家だったんやな。絵本も読んだことねぇっつてよ。

今は妖怪人間読んどる。スポンジが水を吸収するが如くで読み慣れないにしてはスピードがはやい。次何に食いつくか楽しみである。
にしても、書斎というか本スペース。あそこなら作業部屋からもそこそこの距離があるし柳谷女史の電気混乱体質(適当命名)もマシか?

「アンタはなんか読まへんの」
「漫画は頭が悪くなると止められていまして」
「何時代の人間だよ」
「夢中になると護衛ができませんし」
「…たまには息抜きせぇ、倒れるやろ」
「お気遣いありがとうございます、ですが無用ですわ」

ざわり、と空気が揺れる。
嘘だろこの家そこそこ強い結界はってあんだぞ。

「早速仕事のようですので」

見れば書斎方向の空間が歪んでいる。いやいやいや空間支配系かよ面倒くさい。地味に貴重な書物から資料からあんだぞうち。
そこからか。そこから漏れたか呼んだのか読んだのか。それだって油断なく封殺の術が施してあったろうが。
オバケ吸引体質とは聞いてたが厄ネタ吸引体質の間違いじゃねぇんか。今から収集かけて対空支人員と結界解除と厄ネタ封印人員手配してもらうとしてその間にあいつが喰われない保証がない。
とにかく連絡を、と思えば既に鯉口を切る柳谷女史。

おい待てまさかそれを今から振り回す気じゃ、

「そういえば永遠の愛についてでしたっけ」

そんな話してたなそういや!!今どうでもいいけど!!

「私はあると思いますわ。あると信じていると、それだけで力が湧いてきますし、素敵ですし」

穏やかに笑う。目を伏せたまま、視覚以外の感覚で相手を捉える。
一呼吸。

「何度挫けそうになっても、心が折れても、立ち止まって動けなくなっても。また立ち上がった人がいる。その人達が繋いだ道が私達に繋がっている。だから、既に永遠の愛は証明されている。私はそう思っていますのよ」

ごとり、と書斎の方から何か重いものが転がる音がした。
続いて「いってぇ!!」と尾上の声。無事か。
それはそれとして。

「柳谷女史、家の中で刃物を抜くな」
「緊急事態でしたし」
「しかもそれ四儀以上の術師しか携帯許可でえへんやつやろ!!んなもんぶんぶん振り回すな!うちかて結界あんやぞ!真っ二つだわ!」
「だ、だって尾上君の安全と事態の収集にはあれが一番てっとりばやかったんですの!!」
「問答無用や、そこに正座ァ!!」

2時間後。

「蛸嶋君お邪魔しました〜、なんか銅像?これ落ちてきたけど大丈夫なやつ……何してんのお嬢」
「お説教は終わりましたが足が痺れて立てません」
「漫画貸すからお前らしばらく来んな」

結界が修復された頃、「もう大丈夫だから遊びにこい」ってライン貰うまでしょげる2人がいたりする

10/31/2024, 1:06:26 PM

理想郷


シャングリラ、パラダイス、桃源郷に竜宮城。
楽園と天国も追加しておくか。
共通するのは「どこにもない」。

あったら全人類が押しかけて、やっぱり理想郷とは言えなくなるんだろうよ。

そんで自分たちこそが正当な権利者だと声高に叫び、他者を迫害するんだ。

争い絶えぬ地の何が理想郷。
醜いことこの上ない。
しかしそれを醜い無様だ惨憺たる有り様だと言えるのは、
他人事で自分がそれなり恵まれていることに気がつかない人間だけだ。自分たちの生活だって誰かの血と汗に塗れた屍の上に成り立っている。

だから俺たちはまだまだ上をめざそう。
本当の理想郷を作るために、本当に誰もが幸せを得るために、
血と汗に塗れながら道を作るのだ。

10/30/2024, 11:10:14 PM

懐かしく思うこと

「あ、ポリキュアやん懐かしのォ」
「なんですのそれ」
「俺ライダーの方が好きだったからわかんない」
「なんですのそれ」

新顔の電気狂い・蛸嶋の買い出しで電気屋に来ている。
これはテレビの前を通った時の会話だ。大型テレビに映されるアニメキャラクター。これ小さい頃は憧れるよな。あんまり近くで見ないようになる気もする。だって全体が見えないし。
今は組織のボスごっことかホームシアターいいよな〜って思う。
柳谷邸はテレビがない。割とメカメカしい部屋が無いわけではないのだが、昭和で時が止まっているのかと思うレベルで文明が止まっている。石蕗さんの趣味だろうか。もしくは先祖代々の柳谷当主の趣味か?そんな家なのでお嬢がちびっ子向けアニメーションについて詳しくないのも当然である。
逆にパソコンオタク(この言い方も古いんだろう、蛸嶋君にはサイバー対策最前線のエンジニアやぞ!!と怒鳴られた)の彼がわかるというのが驚きである。ライダーでも戦隊でもなく。

「蛸嶋君ポリキュア好きなの?」
「グッズの転売ヤーの通報祭り参加者ってだけや」
「ポリキュアとライダーって何ですの…」
「日曜朝の子供番組枠。基本女児向けと男児向け」
「儂ァ戦隊ヒーロー派やった」
「また新しい派閥が」
「今は何放送してんだろ」
「……ずっと同じものがやるわけではないんですの?」
「一年くらいで新しいシリーズが始まる」
「忙しいですわね……」
「現代の娯楽消費スピードは恐ろしいほど速いからなァ、柳谷女史にゃついてけんのやろ」
「低学年向けですのよね?一週間に30分が一回なら十分ついていけるのでは?」
「ポリキュア、観るのかお嬢」
「修行の道は険しいで柳谷女史」

お前はポリキュアの何を知っているんだ。
その認識は屋台の水飴より甘いぞ。

同じことを考えたのか蛸嶋君と声が重なる。

だってポリキュアだぞ。
あのころ毎週ライダーをみていただけの僕でさえ赤ポリの必殺技を言えるぞ。今思い出してもなかなか重い世界観だった。なんであれ女児向けで一年やっていけたんだろう。
一月に二人くらい死人が出てた。チャレンジャーすぎる。
作中で死んでしまったキャラがエンディングの時に天使の輪と羽が生えた状態でめちゃくちゃ楽しそうに踊る演出が好きだったけど今思うとどうなんだよよく放映できたなあの時間に。



かひつします

10/29/2024, 2:43:12 PM

もう一つの物語

こんにちは。俺はオバケ引き寄せ体質の尾上蓮。
幼馴染のちいせぇ無害なヤツら(オバケ)と戯れていたところを転校生の縦ロールお嬢様に目撃されてしまった。
小さいヤツらと戯れるのに夢中になっていた俺は、背後から刀を振るわれたことに気付かず、目が覚めたら……。


オバケは除霊、俺は所詮「見えるヤツ」ってことで縦ロールお嬢様と同じ「陰陽師」になることが決定していたのだった。
いや厳密には違うらしいんだけど。とりあえず一般人として暮らしていくのに不自由ない程度にそういう知識と技術を伝授してくれるんだってよ。ありがた迷惑ですって一回断ったんだけどな。

『二十歳前に行方不明になるのと、怪異に食べられて生きたまま化け物になって2度と人の道をあるけなくなるのと、普通の人と同じように大学や就職するの、どれが良いですか?まだ選べますわよ』

それもはや一択だろ。
行方不明も人間やめるのも一緒じゃねえのと思ったが。まだ自由度が高そうな道ってことで今おれは柳谷邸にいる。
もしあの時お嬢に出会わなかったら、また違う道だったと思う。
行方不明になった後とか、怪異になって徘徊するのとか、知らないまま、そのみちの世界にかけだして行ったんだろうなと思う。

ハローハロー、お嬢に出会わなかった俺。
そっちはそっちで、元気にやってて。

10/28/2024, 12:55:38 PM

くらがりのなかで

「……電気つかねぇ」

繰り返しスイッチを押すものの電灯は暗いまま。
電球切れた?電球ってか蛍光灯。
接触が悪いのか。なんでもいいけど絶望感。

真っ暗闇の中、一人。

なんでこういう新月の日に限って夜中目が覚めるんだろう。
なんでそういう時ってめちゃくちゃトイレ行きたくなるんだろう。

ここで漏らしたら一生の恥だよな。
別にお嬢とか笹本さんに知られる前に片付けりゃいいしあの二人は俺が漏らしたところで「そんな時もありますよ」くらいで流してくれると思うけど。
どちらかといえば石蕗さんの方が「大丈夫ですか、ここに住んでる間はあなたの体質や諸々の面倒も世話もしますけどそのうち出ていくんですよ今からそんなんでどうするんですか」って顔すると思う。やけに具体的すぎる?こないだ言われたもん一字一句違わず。
でも怖いもんは怖い。

何が怖いのか。オバケ。
言葉が通じない、話が通じない、国家権力も通じない。
理屈も心も通じない。この世の異物。
そういうところだ。

電灯がつかないなら仕方ないので少しでも明るい通路を選んでいく。こっちからだと中庭をぐるっと回るルート。
井戸もあって空気がひんやりしている。夏は気持ちいいんだろう。な〜デッカい西瓜を井戸水で冷やしてさ。
風鈴つけてさ。縁側で食う。最高じゃん。塩かける。

後日加筆します

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