秘密の標本
あの人は博識だ。
僕の知りたいこと全てを教えてくれる。
あの人は寛大だ。誰にでも優しい。
だからこんな僕を受け入れてくれた。
そんなあの人を壊したい。
綺麗なあの人が醜くなる所を見たい。
あの人の大事にしているもの。
僕にだけ教えてくれた秘密の標本。
珍しい蝶、カブトムシ、蜂…。
キラキラしていて宝石みたいだと、
あの人は目を輝かせて僕に話した。
僕はあの人の宝石達へと手を伸ばす。
あの人にしてやりたいように。
手足をちぎり、真っ二つにして中を覗いたり。
羽をむしり月明かりに照らす。
潰す、落とす、マッチで炙る、箱にぎちぎちと詰める。
秘密の標本、秘密にしたい理由は何なのだろう。
何故、僕には見せてくれたのだろう。
あの人はこれを、赤子を抱くように扱っていたな…。
ボクに話しかけるように扱っていたな…。
ボクは、宝石みたいだと、話しているのが聞こえたなぁ…
光と影
光って良いものだと思う?
僕はずっと影に憧れていた光。
影は悪いものさ、見向きもされない。
俺は影を蔑んできた影。
あいつはいつも眩しい白を放っている。
光は周りを消して輝き、未来の不安を隠し、希望を魅せる。
あの子は黒で道を作って地に足をつけている。
影は色んな色を取り込む、混ざって黒を産み、人を知る。
色々な人がいて、色々な色があるから黒くなる。
それって僕にはちょっと羨ましいことなんだ。
皆は影と支え合うから、影は黒くなれる。
光は誰の色も混ぜれない。
それが僕と君。光と影なんだよ。
そして、
みんな居なくなって、
人工物が崩れて、
自然が増えて、
生き物が増えて、
生態系が変わって、
山も、
海も、
空も、
僕も、
全て変わっていって、
そして、
消えない焔
パチッ、パチパチ
きらきら、ちかちかと僕の目に焔の光が入る
貴方がこの姿になりたいと言ったんだ
ならば貴方が貴方の形を失う最後まで見たいと僕は言ったんだ
僕は貴方で無くなったものを手でかき集める
燃えきっていない貴方の破片を粉々に潰す
焔は消えない
もう、燃えるものなどないのに
いや、貴方は僕を待っているんですね
焔を消さず
僕が僕でいなくなるまで
この焔は消えないのだろう
あなた
僕は消えない焔を抱きしめた
終わらない問
なんで僕なの
共通の言葉で話せるのかも分からないのに
僕は目の前にいる狐の化け物に問う
頬まで上がった一本線の口
口を開けばきっと鋭い歯が見えるのだろう
あなたは何者なの
あなたの目的は何
あなたは僕を殺したいの
鋭い歯が見えた、狐が言う
お主ら人間は問を持つ
何かを知りたがる知的欲求がある
問え、問うんだ
私はそなたの問を聞きたい
私の答えはそれだけだ
分からない事が不安を煽る
狐はそれを知っているのか
こうやって人間を追い詰めて
人間を知ろうとしているのか
僕は最後まで問う