「願い事とか無いんだ、叶わないと辛いから」
形だけ作った笑いから上げた口から、
ため息混じりに彼女は言った。
「願ったことは大概、叶わなかったから、
私の願いはそういう物になるんだ」
諦めた様な口振りで、自虐的に笑いながら語る。
「だから諦めたんだ、期待すると辛いだろ?」
そうだね、貴方の気持ちはわからないけど。
「もう良いんだ、こんなものだって、
諦めたら楽になったんだ、本音でね。」
そんな風に笑う貴方は自傷的で、
何よりも哀しみに満ちてる様に見えるんだ。
「願わないから、奪わないでくれ」
それすら願いの一つだと貴方は気づかないまま。
祈るように零したそれを、
ただ月が嘲笑うように見ていた。
#月に願いを
それでいい。
それでも戦え。
#あの頃の不安だった私へ
明日なんて要らなかったよ、
素晴らしい物なんて無いだろ。
疲れ果てて、眠るように消えるんだ。
今日もそんな物だった。
夢見るたびに消えるなら、
それは無いのと同じだと、
泣き腫らした目で語るのか。
それがあんたの明日なら、
それにどれほどの意味があったと
攻めたてる昨日が追い立てる。
逃げるように去ろう、
さよならを言い訳に、
来る明日を言い訳に。
出会いは別れの言い訳か、
それにするのは俺の弱さか。
若草の色が懐かしい、
それも俺の弱さか。
新緑は弱さを置き去りに、
ただ俺を慰めるように蒼かった。
#昨日へのさよなら、明日との出会い
その目が嫌いだ。
慈愛に満ちた様な素振りで笑う、
貴方のその目が嫌いだ。
その手が嫌いだ。
温もりなど欲しくはないから、
貴方の暖かい手が嫌いだ。
哀れみなど欲しくないからと、
遠ざけても追ってくる。
貴方のその足が嫌いだ。
焦がれていた気がする言葉を
歌のように口ずさむ、
貴方のその口が嫌いだ。
その目が嫌いだ、哀れみではなく、
ただ無垢で透明な、薄い蒼に染まる目が嫌いだ。
その澄んだ、狂いそうな蒼が憎かった。
#優しくしないで
貴方からは何も頂きませんでした。
命以外は何も。
恨み言を述べたいのではありません。
私は施しは欲しくはありません。
叶うのなら一つだけ、
ただ、見ていて。
父なる貴方へ。
一つだけ祈りにて賛辞を。
命に纏わる事柄の全てへ。
#神様へ