風土

Open App
11/19/2025, 4:09:36 PM

吹き抜ける風

帰り道、冬の冷たい風が頬を撫でる。
寒いなぁーと思いながらも、正直、悪い気はしない。

寒いのは嫌いだけど、冬は呼吸がしやすい気がして、
いや、呼吸するのが楽しいから、好きだ。

思いっきり息を吸い込めば、肺に冷たい空気が入って涼しくなり、自分の体が暖かかったことを知れる。
そして思いっきり吐いてみると、熱を帯びた白い息がぶわっと目の前に現れて、すぐに消えてしまう。

それだけで気分が上がって、思わず嬉しくなった。
私はやっぱり、まだまだ子供なんだろうな。

9/14/2025, 3:43:49 PM

君と見上げる月は、どんなに綺麗だろうか。

揺れる船の上、真っ暗な中に月明かりで照らされた海
2人きりの甲板、そこに流れる星空や穏やかな時間。

海の音、風の心地良さ、隣に居る君の息遣いの1つ、
きっとどこを切りとっても眩しい、真っ暗なのにね。

目を瞑っても、息を吸ってもずっと胸が苦しいまま、
ふと、君をすこし見上げてほっとする。

そんな時間、2人きりの静かな時間。
そっと流し目で見る君の横顔に、目を奪れる事だろう

そのままずっと見つめていたいと、
愚直で、安直で、でも素直な気持ちを抱えながら、
自分らしくない、乙女じゃないんだぞと呆れる。

それでも少し、少しだけ顔が熱くなった、
この気持ちが、幸せが、君にバレてしまえばいい。

そうしたら、このまま何も言わずに済む、
このまま君と、退屈で幸せなこの時間を過ごしたい。

何か一言でも話せば、世界が崩れてしまいそうで、
もどかしくて、そんな曖昧な風に揺られている。

目を伏せて海を見つめる。
いつもより多く、ドクドクと高鳴る鼓動を感じる、
顔に当たる風を冷たくて、気持ちいい。

頬杖を付く、なんでもないように自然に、自然に…目線を落として、袖に口元を埋めて。

聞こえないように、ボソッと小さく呟く。

月が綺麗ですね。

9/4/2025, 2:24:54 PM

言い出せなかったな。

つらい?かなしい?怖い?苦しい?なんでもいいんだ
…そりゃだって苦しいさ、
苦しいって言葉が浮かぶくらいには。

でも”苦しい”の言葉の先が、つっかえる。
喉から出かかるくらい脈略のある言葉が思いつけばよかった。

分かることは、胸が重くなって、
息も思考も何もかもが止まって、
動かなくなる。

この世の居心地の悪さを痛烈なほど植え付けてくるだけの。
この感覚。

そのまま伝わっていたら逆に怖い、
それくらいの重さを、誰かに背負わせるのが重荷だ。

他人事のように、生きずらい人間がいたものだ。と
心の中で呟く。

…あぁ、誤魔化した方が楽だって気づかなければ良かった。

8/26/2025, 1:47:32 PM

素足のままで、砂浜を走る。

あついのでまともに砂に足をつけない、
しかし、そんなことより海だ!

私は海が好きだった。

なんでかは正直分からない、でも。
何かいつも、真新しいワクワクをくれるから。
なんとなく、海が好きだ。

やっと波打ち際、色が変わった砂に足を置く。
波が動くのが不思議でじっと観察してしまう、
なんでこんな動くんだろ!

そうしているうちに、大きめの波がやってきた。
足の間を流れる波、思ったより勢いがあって怖い、
しかしそんなスリルにもワクワクが勝つ。

直ぐに波が引いていく、逆再生みたいで面白い。
でもちょっと足がくすぐったい!

ウキウキした気持ちのまま、後ろを振り返って。
はしゃいで置いてきてしまった両親を発見する。

「早く来ればいいのに!」

8/18/2025, 6:32:11 PM

足音がする。

誰のだろうと耳を澄ます。
人の話し声、他にも歩く人のざわめきやあくびの音。

それ以外でも、毛色の違う無機質な音。
ぴ!ガタン…!あ、分かりやすい。

目を向けなくても直ぐに自販機の音と分かる。

しかしどうして沢山人がいる中で、
誰のかも分からない足音が耳に残っているのだろうか

私にもよく分からない、がとても気になる…
まぁ、私の中ではよくある事だけれど。

気が散った矢先、多分飽きたので。
いつもと同じく目線を上げ、電線にさえぎられた青空を観察する。

今日は普通にいい天気だ、いい青色!

感動してそのまま眺めていると、空が狭まり周りが暗くなる。電車と屋根の隙間が少し眩しい。
あれ?早かったな…、と少しハッとする。

電車の内側の窓、上がってきた階段を見つめながら。

…結局誰の足音だったんだろ?
あ、もしかしたら同じ電車かな…!

思わず辺りを見渡してしまうが無駄に決まっている。
気づいて即座にやめると少し恥ずかしくなった。

でもきっと、誰が足音を鳴らしたかじゃなくて。
騒がしい中で、誰かも知らない一人の人間の足音、
それを耳に残して、何かを感じ気に停めた。
この余白の方が、多分もっと知るべきことだ。

あー!人の感性って面白いなぁ〜!!
と素早く切り替えた私は、ワクワクしながら。

景色が流れていくドアの隅に身を寄せるのだった。

Next