鏡よ鏡、この世で一番
美しいのは誰かしら
鏡よ鏡、この世で一番
優しいのは誰かしら
鏡よ鏡、この世で一番
可哀想なのは誰かしら
鏡よ鏡、この世で一番
何なら一番になれたかしら
‹凍てつく鏡›
灯籠に蝋燭を立てて
かまくらに七輪を燃して
大きな大きな焚き火の前で
ご機嫌な君が歩いていく
橙に染まる銀世界を
楽しそうに歩いていく
月灯りだけが照らす青白い世界を
そうかこの子は知らないのだ
淋しい世界を知らなくて良かった
美しい世界を知れなくて残念
最初の最後の雪でした
‹雪明かりの夜›
手を合わせて目を閉じた
例えばお墓、仏壇の前
手を合わせて目を閉じた
例えば神社、地蔵の前
手を合わせて目を閉じた
例えば並んだ料理の前
例えば空っぽの皿の前
‹祈りを捧げて›
ケーキにジュース
アイスにチョコ
美味しいものはいつだって
冷たいのだと決まっていた
お部屋のお布団
伸ばされた腕
落ち着く場所はいつだって
温かいのだと決まっていた
寒い寒い帰り道
公園で苦いお酒を呷る
おかしいなおかしいな
何処で変わってしまったのか
‹遠い日のぬくもり›
水面上でキャンドルが
ゆらゆらゆらゆら揺れている
浪漫があって癒しになると
姉が昔言っていた
水面上でキャンドルが
ふらふらふらふら揺れている
決して火傷をしないように
母が昔言っていた
水が無くなりキャンドルが
ふわふわふわふわ燃えている
静かな静かな街の中
誰も気付かず止められず
‹揺れるキャンドル›
眩し過ぎて目を閉じた
足を摺りながら歩き出す
転ばぬように踏まぬように
過剰な程に気を張って
目を閉じて歩いていく
光の指す方向へ
目を閉じて歩いていく
他に見向きもしないよう
目を閉じて歩いていく
目を閉じて歩いていく
最後の最後に望むモノが
きっときっとあると信じ
‹光の回廊›
いつも目で追う人が居た
少し離れた席の人
其処から此方は見えないから
じっと じいっと 見つめている
その人が誰かと話す度
小さく小さく唇を噛み
その人が画面を見る度
己の携帯を少し見た
じっと じいっと 見つめている
その人は何も気づかない
周りも何にも気づかない
それでもじっと見つめている
早く しまえと
‹降り積もる想い›
お母さんのお母さん
おばあちゃんのおばあちゃん
そしてもっともっと前から
約束を結んでいたの
とてもきれいな髪飾り
ちっとも古びない髪飾り
ずっと付けて絶えず付けて
結婚して子を産むまでは
赤いリボンの髪飾り
きれいな石の髪飾り
遠い昔に約束をしたの
見つかったらお嫁になると
どれだけどれだけ時が経っても
必ず見つけて見せようと
とてもきれいな髪飾り
鮮やかな赤の髪飾り
まだまだまだまだ見つからない
もうすぐ私の番も終わる
‹時を結ぶリボン›
プレゼントは何がいい
意地悪な君はお金といった
渡した小さな紙切れを
不思議そうに透かしながら
プレゼントは何がいい
寂しい君は温もりといった
頬を包んだ皮切れに
暫く静かに瞬いて
プレゼントは何がいい
ぼんやりな君は静寂といった
目と耳を塞ぐ布切れに
長く長く吐息して
プレゼントは何がいい
泣けない君は終わりといった
骨首にかけた肉切れに
ありがとうと言葉が落ちた
‹手のひらの贈り物›
その箱に気が付いたのは
本当の本当に偶然の産物
それほど大きくはないが
酷く頑丈で錠まで付いて
中身は何かと思ったが
さてとんと思い出せず
鍵は何処かと考えたが
さて全く覚えが無い
壊すのは少し予感がして
手にした槌を仕舞い込む
さてこれは何だったか
さてこれは何だったか
箱に描かれた猫が嗤う
感情読めぬ顔で嗤う
‹心の片隅で›
しんしんと雪が降っている
六花が音を食べている
ふかふかと雪が積もっている
銀花が声を隠している
しんしんと雪が降っている
誰の足音も聞こえない
ふかふかと雪が積もっている
誰の言葉も聞こえない
‹雪の静寂›
大きくなって 大人になって
みんなを守るヒーローに
大きくなって 大人になって
誰もに愛されるアイドルに
大きくなって 大人になって
世界を揺るがすクリエイターに
語って語って語り尽くして
白い砂浜 波の音
描いて描いて描き尽くして
青々な山 風の音
叶え叶えと駆けていた
きらめく光は箱の中
いつかいつかと願う声
壺に仕舞われ石の下
‹君が見た夢›
いくつもの経験を積み上げて
いくつもの記憶を綴り重ねて
一歩踏み出す先を選ぶ
いくつもの失敗を振り返って
いくつもの成功を重ね挙げて
伸ばす手の先を考える
いくつもの昨日を踏み登って
いくつもの自分を踏み越えて
望む未来の導を灯す
‹明日への光›
必ず辿り着くのだと
人は星を指し示した
遠い遠い昔々に
人が辿り着けなかった夢だった
今なら己なら先人の知識があるのなら
必ず辿り着くと人は言った
それでいい、と天を見上げた
誰かの夢が導になり
誰かの意思が道になり
誰かの執念が炎になる
そうしてそうして進んだ先に
希望という光が灯り
未来が確かに開かれる
結末が星と語られる
そうして満天を埋めていく
その意志こそが星になる
‹星になる›
遠い遠い地平の向こう
重く鳴り響く鐘の音
高い高い壁の向こう
ざわめき止まぬ民衆の音
風を渡って鳴り響く
君の為の鐘の音
葉擦れの音の隙間に響く
君に贈られた祝福の声
草むらの中で草葉の陰で
そっとそっと そっと祈った
もう二度と見えぬ君へ
‹遠い鐘の音›
粉雪の上をさらさらと
長い裾が流れていく
牡丹雪の中をふわふわと
長いベールが流れていく
化粧も笑みも一つもなく
素のままの美しい顔で
白い道をさらさらと
花嫁が歩いていく
白い空間にふわふわと
花だけが色付いている
恋も愛も一つもなく
先に待つヒトに嫁いでいく
白い雪がさらさらと
白い雪がふわふわと
帰り道を塞いでいく
帰り道を消していく
‹スノー›
夜空の向こうに星がある
夜空の向こうに朝がある
夜空の向こうに光がある
夜空の向こうに君がいる
‹夜空を越えて›