コルチカムを贈りました。
カランコエを贈りました。
カスミソウを贈りました。
白薔薇を5本贈りました。
貴方と過ごせたこの日々に、
これ以上無い感謝を贈りたかったから。
勿忘草は贈りません。
クリスマスローズも贈りません。
二度と交わらない道の先で、
貴方が幸せになって欲しいから。
<勿忘草>
空中に放り出される足。
強い勢いに乱れる髪。
ねえ、と瞳は青を写した。
「このまま精一杯漕いだら、空に届かないかな」
馬鹿を言え、と背を見上げた。
「柱に鎖が絡まってお仕舞いだ」
ふうん、と指が握られた。
「一番高いとこで手を離しても?」
馬鹿を言え、ともう一度投げた。
「それで行けるのは石積みの河原だけだ」
そっか、と靴裏が地面を擦った。
「飛行機やロケットなら行けたりしない?」
馬鹿を言え、と目線を合わせた。
「適度に善行積んで死ぬまで生きろ」
それしかないの、と手が伸ばされた。
「君の隣に居たいだけだったのに」
それしか赦さない、と通り抜けた手を見送った。
「君に生きて欲しかっただけだ」
<ブランコ>
「約束を守れなかったんです」
「ずっと一緒にいると誓ったのに」
仄かな夜の灯りの下、ゆらゆら金の水面が揺れた。
「怖くなってしまったから」
「動けなくなってしまったから」
「置いていかれてしまったんです」
僅か軋む椅子の下、片足は力無く重く揺れていた。
「だから、追いかけないといけないんです」
「あの人に追い付けるうちに」
「……あの人が、生きている間に」
緩やかに風を孕んだ、白とも銀ともつかない長い髪。
光無くも穏やかな金色の瞳。
ゆるり伸ばされた指は酷く青白く。
「追い付けたら、ですか?」
「決まっていますよ」
人の道を外されて、魂を歪められて、異形に堕ちたそのヒトは、
「……今度こそ、」
存外、哀しすぎるくらい。深く人を愛していた。
<旅路の果てに>
牛乳と玉子、ちょっと躊躇ったけどマヨネーズと豆腐も投入。
液体みたいになるまでよく混ぜて。
袋一杯分の粉を入れたらさっくり混ぜ過ぎない。
火にかけてたフライパンは一度濡れ布巾に置いてから、生地を高く一気に落とす。
穴が開き出したらせーのでひっくり返す。
甘い匂いが良い感じ。
冷ましついでに微塵切り器へ泡立てパーツとクリームをセット。
保冷剤で冷やしながら紐を引けば、ちょっと緩いけど形には成った。
苺の代わりに赤いチョコ、サービスでアイスも載せてしまう。
手作りが良いなんて我儘、嬉しいけど大変なのよ?
でも、お店のケーキにはとても敵わないけど、おうちのホットケーキにしては豪華じゃない?
なんて。
満開の笑顔の前じゃ苦労も自賛も吹き飛んじゃうわね。
「HAPPY BIRTHDAY」
君が生きていたこれまでに
君が歩いていくこれからに
幸せがいつもありますように。
<あなたに届けたい>
「月が綺麗なのは月が綺麗って意味しかねーんだよばかー!」
「おーん……荒れてますなぁ」
「死んでも良いわって返されても一回引くんだわ!口に出る一般言葉じゃねーんだよ!」
「君一見文学派ロマンチストだもんなあ」
「否定しねーけどリアルロマンは求めてねぇ!この世は堅実!」
「難儀だねえ。生きろー?」
「生きるわ!!ばりばり日の下で生きるわ!!」
「ばっちばちじゃん怖」
「あ?来ないとか言う?」
「いきますいきますー。」
<I LOVE……>
柔らかく暖かな春の光
生き生きと眩しい夏の香
寂しくも鮮やかな秋の音
荒々しく美しい冬の温度
君はどれを愛すだろう
君は何に笑うだろう
透明な窓の向こう
小さな君の目に写る景色は
どれほど輝くだろう
君を抱いて外を歩く日を
どれほどだって待ち続ける
<街へ>
「知ってる?『優しい』って半分は誉め言葉じゃないんだよ」
「裏にはね、『頼みを聞いてくれる』とか、『何も言わなくても対応して』とか、『利用しやすい』とか、『押せばどうにでも出来る』とかね、隠れてるんだ」
「だからね、私、君に『優しい人になって』って言えない」
「君を損なわない程度に、人に優しく『してあげる』位で良いよ」
そう言って、母は微笑んだ。
とても、とても優しい人だった。
<優しさ>