絹糸は黒く、少しだけ茶を載せて。
黒瑪瑙も良いけれど、煙水晶の揺らぎも捨てがたく。
しろくやわらかな包みは大きめに。
細かな螺鈿も忘れてはいけない。
中身は白を中心に、様々な赤と、一番外側は黄色系。
それと隙間を埋め合わせるのは青。
自立出来る位にしっかり包みに詰め込んだ薔薇の花。
贈る筈だった白い衣装。
噛み破った指先で唇を飾って。
ゆらゆら燃える小さなカンテラを確かに持たせた。
「もう一度、やり直そう」
奇跡の材料は揃えた。
禁忌の境界は越えた。
川の縁に立ち竦む指を
この手に確かに引き寄せるために。
<待ってて>
もしもし、元気してる?
私はねー……まぁうん、はい。
全く、人の言う事は一旦聞くべきだったよ。
……後悔はね、しちゃいけないから、しないよ。
まぁこれも君が言ったんだっけね。
あ、そっちって時間有る?無かったら別に良いんだけど、後でまた無駄話に付き合ってよ。
……例の、もう無駄な答え合わせ。今更結果なんて無いけどさ、やるだけやらせてくれると助かる。
「まぁ、私が君と同じ所に行けたらの話だけどね」
ーーーこの番号は、現在使用されておりません。
<伝えたい>
「覚えてる?」
「覚えているわ」
「君が花をくれた場所だ」
「あなたと星を数えた場所ね」
「此処で別れて」
「此処で出会って」
「此処で呪った」
「此処で誓った」
「憐れな君、此処をさいごにしよう」
「可哀想なあなた、此処でおわりね」
「……でも、惜しむらくは」
「……ああ、残念ね」
「「最期くらい、その声を聞きたかった」」
<この場所で>
誰にも好かれる人とは。
優秀な人?
いいや人間は妬む生き物。
優れている程、秀出ている程、悪意が纏わり付く。
身も心も美しい人?
いいや人間は欲有る生き物。
弱い手、強い手、己の得の為に無惨に毟り取る。
平等で優しい人?
いいや人間は特別を望む生き物。
天秤を傾け、破壊し、その尊厳を踏みにじる。
では、
誰よりも劣悪で、醜く、善性の足らぬ人?
いいや、いいや、それでは関心を得られぬ。
誰もお前を見てはくれぬ。
<誰もがみんな>
1本なら一目惚れ
3本なら愛しています
12本で付き合ってください
99本で永遠の愛
108本は結婚してください
「薔薇だけじゃないんだ」
「うん。多いやつは特にね、他でも成立するって」
2本なら二人だけ
4本なら死ぬまで変わらない
24本で一日中思っている
100本で100%の愛
365本は毎日恋しい
「頓知になってない?」
「それを言うなら1本もまあそう」
16本なら不安な
17本で絶望的
「そこまでして愛に拘る必要あった?」
「友情とか出会いの喜びとかも有るよ、一応」
「それで?」
「うん」
「こんな森の中連れてきた理由、まだ教えてくれないの」
「もう分かるから」
「ふうん?」
木々を抜けた先、鮮やかな風の色
一つたりと違えず咲き誇る永遠の庭
999本の花言葉は
<花束>