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2/27/2024, 1:43:31 PM

彼女はいつも真面目だった。
泣き言を言いつつも
魂が口から出ていようとも
どれほど遅くても、期限までには
必ず終わらせる人であった。
「だって、どんなに待ったって
 私がやらなきゃ終わらないのよ」
「後回しにして後で詰むより
 ゆっくりでも進んで
 すっきり終わって休む方が
 すごく気楽なのよ」
「まあでも」
かつん、とペンが手帳を叩く。
「見てわかる通り、しない訳じゃないわ」
急ぎの用件と、そうでもない課題の並んだ画面に、
書き散らされたメモ用紙と、丁寧な私物の手帳。
机の上の優先順位はばらばらぐちゃぐちゃで、
効率も何もあったものじゃない。
「結局皆、終わり良ければすべて良し。だからね」

<現実逃避>

2/26/2024, 1:17:02 PM

GPSにカメラに盗聴機
別に良いよと彼女は言った
「私、お店は一人で回りたいの」
その代わりにね、と彼女は言った
「貴方も同じにしようね?」
GPSにカメラに盗聴機
一秒も一歩もズレを許されない生活を
「だって、貴方は私に求めたよ?」

<君は今>


とろりとろり薄灰のクリーム
刺したナイフはじっとり重く
かろうじて火の通った生地
ドライフルーツで誤魔化して

初めてには上出来で
美味しいとは言えず

一人分には大き過ぎるケーキ
椅子には埃が積もるまま

<物憂げな空>

2/24/2024, 2:04:26 PM

動物の子供
人間の赤子
成体の小動物
群れる虫けら

『でも君達は わたしたちを
 ソレに数えてはくれないね』

手の中で押し潰された
名も知らぬ雑草の蕾

受粉を終えて
成熟を待つのみだった種子

嘯くような風と共に
綿毛が遠く旅立ち行く

<小さな命>

2/23/2024, 11:30:05 PM

ありがとうと言うと
ごめんねと返ってきた

大切にすると言うと
馬鹿だなあと返ってきた

好きだよと言うと
同じだねと返ってきた

忘れないよと言うと
思い出にしてと返された

いつまでもと言うと
死ぬ迄で良いと返された

毎夏君に会いに行く
墓石は何も応えないけど

<Love you>


向日葵、という言葉が並ぶ中に、
一人だけ、違う花の名を上げた子がいた。
「向日葵はお日様に向かって咲くのよ。
 それじゃあ別個体じゃない」
成る程、そういう考え方も有ろう。
とはいえ、その子の上げた名前も、
星空ならまだしも、連想は付きにくい。
「そう?直視出来るのなんて、
 木漏れ日くらいじゃないかしら」
常緑の隙間を埋め香り立つ金銀。
はらはらと落ちる小花。
やわらかな秋の日差しに、
確かによく似ていたのかもしれない。

<太陽のような>

2/22/2024, 11:32:31 AM

 中古ショップを覗いていた時のことだ。
 ふと、一つのゲームソフトが目に留まった。
 昔、何人かの友人が楽しんでいたシリーズだったと思い、当時は小遣いが届かなかったことも思い出せば、今となっては大したことの無い値札を付けたままレジへ向かった。
 家に帰り、押入れ奥から引っ張り出したゲーム機本体は、多少埃を被っていたが問題なく起動する。
 最初は多少のキャラメイクがあっただろうか、相棒はどのキャラにしようか、年甲斐なくわくわくしながらオープニングを見遣ると、『続きから』の文字が目に入った。
 どうやら前の持ち主は初期化せずに売りに出したらしい。『はじめから』にカーソルを移動させ、いやいや待てよと思う。どうせなら、前の人の冒険を少し覗いてみたい、と興味が湧いたのだ。

『久しぶり』
『待っていたよ』
『どうしたんだい、そんな顔をして』

「……ああ、そういうことか」

見覚えの有るキャラクター、の多分しないだろう顔。
郷愁を誘うドットの景色、が奥で崩れている。
きっと考えてつけた筈の名前、が途中で文字化けし。
多種多様な道具、はどれもカウントストップ。

登場しない筈のキャラクターと共に一通り巡って、電源を落とす。

チートに歪まされた世界は恐ろしく物悲しい。
瞬きほどの沈黙を黙祷の代わりに、
今度こそ新しい世界の構築を選択した。

<0からの>

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