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6/15/2024, 9:50:37 AM

「曇ってないか?」
「観測範囲の20%晴れてれば晴れらしいよ」
「つまりハズレの80%引いたと」
「まあそういうこと」

「曇ってないか?」
「雲一つ無い晴天って無いんだわ此方」
「まーじーぃ?」
「まじまじ」

「曇ってないか?」
「……まあ、これから氷河期になるんじゃない」
「っ、お前」
「まあ、雲の向こうから見物しといて」
「なんで……」

‹あいまいな空›


移り気なのだと、振り返った口元は笑っていた。
雨によく似合うその花は、土で色を変えるからだと。
赤に紫のグラデーションが美しい中、
一つだけ鮮やかな青い花弁で立ち止まる。
少しだけ盛り上がった土と置かれた丸石。
桜が赤くなるのは迷信だけど、
酸性の土で青くなるのは本当だと。
そっと、静かに、手を合わせた。

‹あじさい›

6/13/2024, 8:50:55 AM

右と左、と問いかける。
右と答えた君が顔を顰めるから笑った。
赤と青、と問いかける。
青と答えた君が手を叩くから笑った。
一と二、と問いかける。
一と答えた君が跳ねるから笑った。
昨日と明日、と問いかける。
明日と答えた君が悔しげで笑った。
君と私、と問いかける。
答えられない君に私は笑った。
答えた私に君は泣いた。
それだけのことだった。

‹好き嫌い›


向日葵が咲いていた。
揺れる大きな集密の種子、一瞥して通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
暑さに項垂れる首二つ、一つも見上げず通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
散水の蒸気に慄く緑、憐れみも無く通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
向日葵が咲いていた。
誰も居ない私の故郷に
沢山の向日葵が咲いていた。

‹街›

6/11/2024, 9:22:09 AM

「殺したいなって、死ねばいいのにって
 思うこと、勿論有るよ」
「聖人君子の形したって人間だもの、
 気に障ること位あるさ」
「でも、実現出来るかって言ったら
 残念ながらそうはいかない」
「人を殺してはいけません」
「死を願ってはいけません」
「人を呪わば穴二つ」
「良心の呵責、刑期と影響、死後のその先」
「そういった諸々、いろんなことが総じて
 最終的には想像や言葉だけで終わらせる為の
 ストッパーになる」
「こういうのを、『教育の勝利』と呼ぶのかも
 しれないね」

‹やりたいこと›


半覚醒のまま伸ばした手の先
仄かに暖かく空っぽの枕
すうすうと空洞の淋しい布団の中
誤魔化すように脚を擦り合わせる
耳を澄ませど声も足音も
他の部屋にいる気配すら無く
眩しさを言い訳に閉ざした瞼は
現実を見定める気力もなく

‹朝日の温もり›

6/9/2024, 9:17:08 AM

「ハブとマングース」
「猫と鼠」
「捕食関係草ぁ」
「天敵のお前が言うか」
「ハチとアカシア」
「……トマトとナス」
「は?なにそれ」
「接ぎ木」
「共生どころじゃねえの来た」
「健やかなる日も病める日も死せる日も一緒だぞ」
「おーんこれは根に持ってますねぇ……」
「盛大に破ったお前のせい」
「ぐうの音もない」
「大体こちとら…って」
「あー…順番来たねぇ」
「全く……そっちに着くまで待ってろよ」
「了解了解、盛大に目立っとくから見つけてな」
「お前が見つけろよ馬鹿、何年開くと思ってんだ」
「…はーい、大人しく寂しく独り身してますよーだ」

‹岐路›

6/8/2024, 4:43:23 AM

「……何してんのこんなとこで」
「見ての通り終末待ち」
サクサク頬張られたお菓子に半分程のペットボトル。
息を潜めた様な暗い住宅街で、そこだけ妙に平和だった。
「最後なのに家帰らないの」
「ちょっと前まで居たよ。皆寝たから抜けてきた」
「ははぁ成程、さては恋人とラストカウントしようと?」
「生まれてこの方居た事ないわそんなの」
くるり丸められた包装紙。地面に転がるゴミと裏腹に、こんな時まで白い袋に片付けられていく。
「それじゃあなんでまた」
「質問ばっかじゃモテないよ」
「……兄姉皆恋人連れてきて酒池肉林」
「わぁおご愁傷様……」
かろと回された蓋、喉が動く一呼吸。
「流れ星を見に」
「はぁ?」
「どうせ最後なら目を閉じるんじゃなく、
 最期まで全部見ていたいなって」
「……そっか」

‹世界の終わりに君と›

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